蔡國強さんとの再会
2009年4月10日 (金)
中国出身の現代美術家の草分けであり、NYを拠点に
世界中で活躍される蔡國強さんとのご縁は、2001年にさかのぼる。
当時、慶応大学大学院の日本美術史のゼミを聴講しておられた
箱根彫刻の森美術館の館長であった産経新聞顧問の
鈴木隆敏さんからのご依頼で、蔡さんが同美術館で2002年春に
行なう展覧会で、庭園内にある使われていなかった茶室「雲霓(うんげい)」」
を会場として、岡倉天心『茶の本』へのオマージュをテーマに
作品を作られるので、協力してほしいとのことでお目にかかったのが
始まりだった。
(参照→http://tenplusone.inax.co.jp/review/kuresawa/kuresawa.html)
それ以来これといった行き来はなかったが、いずれご縁が
あると思っていた。今回の渡米後も強いてこちらからコンタクトをとること
はなかったものの、蔡さんの存在は初めて現代美術とお茶との共通項を
私に知らしめてくださった方として、気になり続けていた。
幸い昨年暮れ、杉本博司さんのお誘いでお邪魔したグッゲンハイム美術館
アジアセクションのキューレター、アレクサンドラ・モンロー女史宅での
パーティの折に再会を果たすことができ、ぜひアトリエに来てお茶をとの
お話になった。かつNYでお茶を通して知り合ったMさんのお友達が蔡さんの
アトリエのスタッフであることからいろいろご協力を頂き、この日の訪問と
お茶会を実現することが出来た。
ダウンタウンのアパートの1階フロアすべてを使った蔡さんのアトリエは
中庭もあり明るく、広々と清潔感がある。年の半分は世界中を
飛び回っておられる蔡さんは、前日ヨーロッパから戻られた
ばかりとか。疲れも見ぜず笑顔で出迎えてくださり、およそ7年のブランク
があるとは思えないほど、ごく自然にお互いの近況や新作のことなどを
お話しすることが出来た。アトリエで是非お昼をとのお言葉に甘えて、
スタッフやゲストの皆さんと一緒に毎日作られているという薬膳仕立ての
中華料理を頂戴した。自身の作品にも漢方や気功などを取り込まれる
蔡さんらしいこだわりの感じられる美味しいLunchだった。
その後ご一緒してくださったMさんとお茶の支度に入る。料理の
においを消すために香を焚き、道具を並べだすと皆さん興味深々。
その頃には蔡さんが招いてくださったゲストの方々もアトリエに
あらわれた。たとえばアカデミー賞受賞者で作曲家のタンドゥン氏。
彼は数年前お茶をテーマにしたオペラを作曲されるなど、茶の湯にも
非常に高い関心を持っておられ、特に蔡さんが引き合わせてくださった。
この他にもリンカーンセンターのビジネスディレクターや蔡さんが
演出の監修をなさった北京オリンピックのクリエイティヴチームの
コーディネーターを務めた方なども。やがて一同料理を頂いた
大きなテーブルを囲んで、Mさんが持参、セッティングしてくださった
銀瓶と湯沸かしを使い、茶箱を広げて盆点前で薄茶一服
差し上げた。
点前の最中、初めて茶の湯に触れる方のために
蔡さんは『茶の本』を引用されながら、お茶の魅力や効用を
熱心に説いてくださった。そしてご自身もおよそ7年ぶりのお茶を
美味しいと味わって召し上がってくださった。今回の滞在中
忘れられない再会の一日となった。

2009 年 5 月 27 日 9:46 PM
『BRUTUS』での仏像特集以来、ご無沙汰しております。
ご帰国前のラストスパート、という感じで、お忙しさを
増しておられるようですね。
蔡國強さん、懐かしいです。お二人のコラボレーションを『AERA』で
取材させていただいたのが、千さんとの初めてのお仕事でしたから。
あれから幾星霜(笑)、仏像特集までやっとたどりつきましたが、
おかげさまで7千部の増刷も決まりました。
有形無形の土産を抱えてのご帰国後も、引き続きよろしくお願い
申し上げます。
橋本麻里 拝