Categories: CASA BRUTUS | 千 宗屋 茶味 in ニューヨーク。 Charming New York - 2009.03.16
水墨画の名宝、ワシントン「フリアギャラリー」再訪
14日、15日もNY各所で開かれているアジアアートフェアに協賛の
ギャラリーや展示会を回る。15日はクリスティーズでのレセプションに
顔を出し、そのあとは山下裕二先生と久々に夕食をご一緒しながら
近況を語り合う。話題は秋からの授業の内容など。もうそろそろ帰国後の
スケジュールを考えなくてはいけない時期に来てしまった。月日がたつのが
本当に早いと実感。
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↑ペンステーション前のバス停から
エンパイアステートビルを望む。
16日朝8時前、ペンシルベニア駅前に集合。大学の春休み期間を利用し、
コロンビア大学マシュー先生の特別の計らいにより、水墨画をテーマにした
ゼミで、ワシントンDCにあるフリア-美術館が所蔵する水墨画を特別観覧
することなった。
スケジュールは2日間。門外不出のフリアーの名宝をたっぷり勉強し
堪能する機会を与えて頂いた。今回滞在中、少しでも在米の
日本美術の名品に触れておきたいと念願していた自分にとっては
得難い無二の機会である。ワシントンまでの高速バスに乗って、
はやる気持ちを抑えながらマシュー先生とこれから見る作品について
あれこれ思いを巡らす。院生たちは事前の資料読みに余念がない。
やがてバスは、12時過ぎに無事DC到着。地下鉄に乗り換え
スミソニアン博物館・フリアー・サックラーギャラリーへと直行した。
秋以来の再会であるDeputy DirectorのJammes Ulak氏に
出迎えられ、早速地下のStorageへ。ブルータスの取材で伺った昨夏は、
琳派がテーマのため宗達の金碧きらびやかな世界が広がっていたが、
今回はテーマが水墨であるため、一転モノクローム。山水や
花鳥画、僧侶の頂相といった渋い掛け幅の作品が並んだ。その多くが
14世紀から16世紀前半にかけて京都、あるいは関東で描かれた
室町時代の墨の彩りを今に伝える。いずれも日本では研究の過程において
図版などでたびたび目にしていた作品ばかりなので、その質感や
大きさを確認し、今それらが眼前にある事実を噛みしめた。
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↑左より伝周文筆・山水図、相阿弥筆・柳下白鷺図、
藝愛筆・柳燕図。いずれもフリアー美術館蔵。
調査はあくる18日も続き、10時に同じStorageに伺うと、おなじく
モノクロームでありながら昨日と全く異なる世界が広がり、目を驚かされた。
それは一日目が掛け幅中心であったのに対し、この日は屏風が
メインだったからによる。が、何といってもこの日の眼目は
フリアの誇る俵屋宗達のもう一つの傑作、水墨「雲龍図屏風」
である。もくもくとわき起こる雲気の中から姿を現した龍と、
荒れ狂う波。全体に刷いた薄墨が乾かないうちに濃墨を点じる
ことで広がる滲みの偶発性を生かした宗達独特の「たらし込み」
の描法をこれほど活かした作品はほかに見当たらない。
宗達の水墨画による屏風の大作は、いま日本に現存しない。
日本にあれば間違いなく国宝指定を受けているであろう
作品が目の前にある感動は筆舌に尽くし難い。
そして室町水墨画の系譜をフリアーの所蔵品で実際に
眼で追って最後に宗達を見ると、この画家はやはり
江戸に始まる琳派の文脈で見るより、中世絵画の
最後の輝きととらえる方がよりしっくり来ることが改めて
判った。この日はこのほか、伝雪舟といわれる山水図屏風や
花鳥図屏風(紀州徳川家旧蔵)、評論家小林秀雄が愛蔵していた
雪舟の弟子・秋月の「揚子江図巻」なども精査することができ、
さらにサプライズとしてフリアーの所蔵品ではないが、折よく
寄託されていた、私がアメリカにいる間にぜひ見たいと念願していた
画家の作品を図らずも見ることが出来た。美術館関係の皆様、
マシュー先生のご配慮に心から感謝したい。
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↑ワシントン国会議事堂。2か月前の
オバマ大統領就任式の折はこの広場を
人々が埋め尽くした。