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Categories: CASA BRUTUS | 千 宗屋 茶味 in ニューヨーク。 Charming New York - 2009.04.03

バードカレッジでのデモンストレーション、クラーク美術館


↑Hudsonの街より、別院のあるEast chatamに
 向かう。

2日よりUp Stateにある天台別院を再訪した。今回の滞在中これで3度目。

前回2月には雪深かったここも、すっかり早春の装い。山々も新芽が芽吹き、

全体がピンクがかっているのが日本の自然と異なり、一層ダイナミックな印象を

与える。今回は別院住職のポール・ネイモン聞真氏が教授を勤められる

バードカレッジ・サイモンズロックで是非デモンストレーションの茶会を行って

欲しいとのご依頼に応え、お伺いした。前夜は、以前から念願だった本堂で

ひとり坐禅止観の時間を持つことが出来た。マンハッタンと異なり、周辺は

どこまでも静か。薄暗くした本堂でひとり座禅を組んでいると、自分の中に

あったもやもやや溜まっていたものが綺麗になくなっていくように感じるから

不思議だ。NYで座禅やヨガが流行るのもわかる気がする。

 
↑2月に訪れた際には胸まで雪に埋もれて
 いた石仏も、ご覧の通り。

 あくる日はネイモン氏の運転で、バードカレッジ・アット・サイモンズロックへ。

ニューヨーク州のほとんど境目にあるイーストチャダムから、あっという間に

州境をまたぎマサチューセッツ州にある同大学へ。森の中にある、こじんまりとしながら

開放感あるキャンパスには、雰囲気の良い、程よい規模の建物がいくつも

点在している。その中の学生会館の前で車は止まり、会場はその中にある

メディテーションルームだという。


↑何もそんなに伸さなくても…。

 11時過ぎセッションを始める頃には、学生から教員まで20名ほどの方が集まり、

僕をぐるっと取り囲むようにして、銘々部屋にあったクッションに坐り、

とてもインティメイトな雰囲気の中行うことが出来た。

あらかじめ部屋には香を焚き、雰囲気を作っておいた。


↑デモンストレーションに先立ち、茶の歴史や簡単な
 飲み方などを講義する。

お茶の歴史などを20分ほど話した後、茶箱を広げて盆点前により、学生全員に

一服を差し上げ、質疑応答をうけた。ここではじめて教員のひとりから

噂に聞く「お茶に蜂蜜とミルクを入れることはないのか?」という質問が出たのは

ご愛敬(しかも教員の方から!?)だが、ひとつ忘れられない出来事が。

終わって片づけていたら一人の学生が小さな包みを持って僕のもとに。

開けてみると中には備前風の茶碗が。聞けば彼は陶芸専攻の学生で、

今日僕が来ることを知って、渡すために茶碗を作ってくれたとか。

もとより茶の湯の経験もないであろう彼が一所懸命作ってくれた茶碗は、

オブジェ専門という彼らしくいささか装飾が過剰だが、不思議と

重さと寸法が茶の湯に好ましいものとなっており、これから折々

この一年を思い出して使うよすがを得た思いで何より嬉しかった。


↑車座になって薄茶一服を呈した。


↑学生から頂いた茶碗。点てやすく頂きやすい。

 午後は近くで簡単にLunchを済ませ、さらに車を1時間ほど走らせ、

ウィリアムズカレッジがあることで有名な大学街、ウィリアムズタウンの

クラーク美術館を訪れることが出来た。ここはネンモン氏の勧めで、

私もかねて訪れたかったところ。http://www.clarkart.edu/


↑雨のウィリアムズタウン(クラーク美術館正面より)

午後からのあいにくの強い雨に、本館の上にある安藤忠雄氏設計の

Stone Hill Centerに行くことは断念したが、背が低く安定感あるプロポーションが

印象的な白亜の瀟洒な本館で、ピエロ・デラ・フランチェスカ、ボッチチェリ、ゴヤ、

ターナー、シスレー、モネ、マネ、ゴーギャン、ドガそしてサージェントといった

名画の数々を、程よい規模の展示空間で堪能することが出来た。


↑ピエロ・デラ・フランチェスカ「聖母子と四天使」
 まさかマサチューセッツの小さな街にこれほどの
 彼の大作が存在するとは思いもよらなかった。
 


↑ジョン・シンガー・サージェント
 「龍涎香の煙」(1880年)

 が、なんといっても驚くのがルノアールのコレクション。中央展示室の北壁の

ほとんどが彼の作品で埋まっていた。そのいずれも質が高く、今までルノアールは

どちらかというとあまり好きではなかったが、その良さを改めて知る良い機会となった。


↑ドガのブロンズ「踊り子」、奥に
 ルノアールの「コンサートにて」。
 今までで最も魅せられたルノアールの作品。

 個人コレクションの美術館だが、これまでアメリカで訪れたフリック、ガードナー美術館が

邸宅をそのまま美術館にしたのと違い、ここは純然たる美術館施設に展示されている。

 でありながら、邸宅のサロンで見ているような落ち着いた雰囲気で作品と向き合えるのは、

ひとえにコレクションに込められたクラーク夫妻の愛情を、美術館がよく理解し引き継いだ

展示を心がけているからだろう。いつまでいても飽きない、居心地の良い展示空間と、

抜群に趣味がよく嫌みなく名作の集まった珠玉の美術館を後ろ髪引かれる思いで

閉館間際に後にした。

 
↑印象派が一堂に会する中央展示室。