マガジンワールド|株式会社マガジンハウス
 

Categories: CASA BRUTUS | 千 宗屋 茶味 in ニューヨーク。 Charming New York - 2009.04.05

フェルメール@メトロポリタン美術館


↑メトロポリタンのGreat Entranceには
常に季節の生花が活けられている。
もちろん桜。恒久的にこの花の予算を
寄付している方がおられるとか。

久々にフェルメールネタ。年明けより現在唯一の個人蔵にかかり、

最も新出のフェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女」がメトロの

オランダ絵画の部屋に展示されていると朽木ゆり子さんから聞き、

是非見たいと思っていた。ちょうど8日のコロンビア大大学院ゼミで

室町時代の阿弥派のプレゼンをせねばならず、そのPPTのために

相阿弥の「山水図屏風」の写真が必要だったので、日本ギャラリーで

撮影がてら、メトロに出かけた。

 
 ↑フェルメール5点が一堂に会するオランダ絵画の
 展示室。

 目当ての作品は西洋絵画のコーナを突き進んで

右奥にあるオランダ絵画の部屋。時々改装や展示替えが

行われるため必ず定まった場所にあるわけではなく、この日も

前回フェルメール群を見た隣の展示室にほとんどの作品が

移っていた。

 展示室西壁には向かって右から「リュートを調弦する女」「少女」

「窓辺で水差しを持つ女」そして問題の「ヴァージナルの前に座る

若い女」が並ぶ。そして、向かい側の壁には晩年の一風変わった

「信仰の寓意」が。さらに隣のべンジャミン・アルトマン寄贈

作品をまとめた部屋に「眠る女」が飾られ、メトロだけで今の時期

計6点のフェルメールを一気に見られることになる。


↑件のフェルメール「ヴァージナルの前に
 座る若い女」(1670年頃)個人蔵。


↑「眠る女」(1656-57年)

 さらにほど近くのフリックコレクションに3点、

ワシントンのナショナルギャラリーにも3点、行方不明だが

ボストンのイザベラガードナー美術館に1点の、実にアメリカ東海岸

だけで13点のフェルメールが存在することになる。

 新出の作品は、左上方の窓からの光を受けてヴァージナルの前に

座る女が、ふと演奏の手を止めて振り返る瞬間を描いている。他の

フェルメールに比べるといささか静中の動にかけるように感じるのは、

羽織られたヴェールの衣紋の表現などがぎこちないことから、後筆

と考えられていることとも関係があると思われる。またそこから伸びた

腕の太さも均一で、ちょっと大根のよう(笑)。そんなこともあって、

補筆が多いのか、または真作であることを否定する研究者もいたりと

まだまだ未知の可能性を秘めた作品である。ともあれ、ほとんどが

美術館に入っているフェルメールにあって個人蔵はこの一点のみ。

メトロでの公開がいつまでかは分からないが、全点踏破を目指す方は

是非今のうちにメトロポリタンを訪れるべきだろう。

 このほか韓国美術のギャラリーでは「Art of the Korean Renaissance,

 1400–1600」と題した、韓国の中世美術の展覧会が開かれている。(6月21日まで)

参照→http://www.metmuseum.org/special/se_event.asp?OccurrenceId={5CCD5232-A073-4DBE-A06D-36D32D933A74}&HomePageLink=special_c3b

規模は小さいが展示も内容も素晴らしく、本国や日本からも名品が多数出品

されていて見ごたえがある。改めて日本と韓国の美術をめぐる交流を考える

契機となる展示である。

 隣の中国美術のセクションでは、館蔵の明時代の絵画の優品が一堂に

会していて迫力がある。古今東西のあらゆる一級の美術の間を同じ屋根の

下で何度も行き来出来る歓びは、ニューヨークならではのものである。


↑帰りは快晴ののセントラルパークを歩いた。
 Conservatory Waterより5thアベニューの
 ビル群を望む。まさに水温む頃だ。