ブログ天国

ブログ | マガジンワールド


【Vol.32】慶應義塾大学医学部の漢方医学センター

今日は大学病院での漢方診療のお話です。

今から遡ること11年ほど前、慶應義塾大学病院に「現代医学の中で漢方治療をより良く生かす」ことを理念として漢方クリニックが開設しました。
今では「漢方医学センター」診療部として、最先端の医療と体全体にやさしい漢方治療とを同時に受けられる施設として、漢方診療が行われています。
慶應義塾大学病院 漢方医学センターには西洋医学に加え、東洋医学である漢方を専門に研修した医師がたくさんいます。

masuda_vol32_1

教授の渡辺賢治先生(前列左から2番目)は、日本東洋医学会評議員・指導医・専門医、日本漢方生薬ソムリエ。
「学生時代から漢方の勉強を始め、北里研究所東洋医学総合研究所では、煎じ薬を中心とした伝統的な漢方を勉強してきました。漢方は病気を治すのではなく「人を治す」医学です。専門は内科ですが、内科に限らず種々の悩みをもつ人を治療しています。また漢方は病気になる前の「未病を治す」点が優れています。病名がつかないような体の悩みは多々あるものです。どんな悩みでも気軽に相談して下さい」

堀場裕子先生(助教・前列一番左)は、日本東洋医学会専門医、日本産科婦人科学会専門医、がん治療認定医、日本漢方生薬ソムリエ。
「産婦人科医として働いているときから、更年期障害や月経困難症、月経不順などで漢方薬を処方することがありました。私も漢方薬を飲んでおり、効果を日々実感しています。女性だけでなく男性や年齢もさまざまな患者さんと接する中で、西洋薬とは異なる効き方をする漢方の魅力をますます感じています。皆様の困っていることや悩みに対して漢方で少しでも改善できればと思っています。ちょっとしたことでも相談していただければうれしいです

おふたりとも、とても優しく、知的で素敵な先生です。私は大好きで、漢方のことをいつもたくさん教えていただいています。

漢方診療では、脈診・舌診・腹診など、東洋医学の伝統的な診療方法で、ひとりひとりの患者に最も適した漢方薬による治療を行ってくれます。
たとえば、鼻や皮膚の病気であっても、病気になっている部分だけを診るということはなく、体質や個人差を重視します。医師は、私たち患者の様子を観察し、質問したりしながら、抵抗力や体力も診て、「虚」「実」「寒」「熱」などの漢方医学的な診断を行い、「証」(タイプ)を決めて、薬を処方してくれます。
漢方薬は、服用しやすいエキス剤を中心に、伝統的な煎じ薬を出すことも。いずれも保険診療が可能なので、負担が少なく専門家の診療が受けられます。

masuda_vol32_2

写真は、漢方薬に使われる生薬です。漢方薬は2種類以上の生薬を組み合わせて作られた薬です。センブリやドクダミなどの民間薬とは違います。
保険が使える薬は148種類(軟膏を含む)あり、西洋薬との併用もできます。漢方薬には、副作用もありますので、医師の診療を受けて自分に合ったものを処方してもらうことが大切です。

漢方薬に使われている生薬は、私たちの身近にある植物がたくさん使われています。

masuda_vol32_3

たとえば、秋の植物。これはなんだかご存知ですか?
正解は、「山椒」(さんしょう・ミカン科)です。健胃作用があると言われています。

masuda_vol32_4

山椒は、「大建中湯」(だいけんちゅうとう)という漢方薬にも入っています。
「大建中湯」は、山椒、乾姜(生姜のこと)、人参、これら3つの生薬からできています。おなかが冷えて痛んだり、腹部膨満感があるときなどに使われます。

masuda_vol32_5

では、これも秋の植物。この白い花は、なんでしょう?
正解は、「山梔子」(さんしし・アカネ科)。みなさんがよくご存じの「くちなし」のことです。漢方薬には、右の赤い実のほうを使います。滋養・強壮作用があります。

masuda_vol32_6

「山梔子」は「黄連解毒湯」(おうれんげどくとう)という漢方薬に入っています。
「黄連解毒湯」は、飲み過ぎ、食べ過ぎのときに服用するとすっきりします。二日酔いにもいいです。

慶應義塾大学病院 漢方医学センターでは、胃腸障害(腹痛、下痢、便秘)、慢性肝炎、アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息、花粉症、蕁麻疹など)、不妊症、習慣性流産などの産科疾患、生理不順、生理痛、冷え症、更年期障害などの婦人科疾患、心身症、自律神経障害、神経症など、高齢者の老化にともなう種々の症状(前立腺肥大、しびれ、膝痛など)、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、風邪をひきやすい、おなかを痛がるなどの虚弱体質の子ども、がんや膠原病などにともなうさまざまな体の不調や体力低下などの診療が多いそうです。
でも、これらにかかわらず、なかなか改善しない不調は、ぜひ相談してみることをおすすめします。
私も服用していて思いますが、漢方は、「治らない」「改善できない」と思っている不調や病気をいい方向へ向かわせてくれます。試してみる価値あり!です。

*ここに掲載した写真はすべて、堀場裕子先生からお借りしたものです。