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第9回 小宮山書店 小宮山 慶太さん

profile:こみやま・けいた。高校時代からデザインの勉強を始め、大学卒業後、実家の小宮山書店に入り、古書店に入ってから学んだ知識と自身の得意なジャンルを生かし現在のスタイルを作る。◯東京都千代田区神田神保町1-7 ☎03-3291-0495 11:30~18:30 11:00~17:30日祝 年中無休(年末年始を除く)

近頃、東京では代官山の蔦屋書店のように、トークショーやカフェサービスなども楽しめる本屋さんや、ZINEだけを取り扱ってる本屋さんなど、それぞれテーマを持ち、新しい本の楽しみ方を提案する本屋さんができています。このブログでは、かけだしライターの私、宮本 賢がそんな本屋さん訪れて取材。本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)のおもしろさを教えてもらおうという企画です。インディペンデントでかっこいい本屋さんにいる「本のスペシャリスト」に会いに行ってきます。「Diggin’ Books」毎月更新!

言わずと知れた古本屋さんの街、神保町。本好きにとっては居心地がいいけど、本に親しみのない人には少し敷居が高いかもしれない。だけど、その両者が満足できる本屋さんがあるという噂を聞き、訪ねてきました。



  
  

お店はなんと6フロアも!古本屋さんのイメージからするととても広いですね。
 
「そうなんです。1939年からあるので、さすがにそのときはビルではなかったですけどね。祖父が開業して、私で3代目になります。その当時は、文学や歴史・考古学などが中心でした」

昔から本屋さんになろうと考えていたんですか?
 

「私は高校生のころからデザインの勉強をしていて、当時はその関係の仕事に就こうかと考えていたんですよ。でも、大学を卒業して小宮山書店に入り、本のことを勉強しているうちにのめり込むようになっていったんです」 
  
  
  
  
  
 

写真や絵、フィギュアまで置いてあるという少し普通の古書店とは違うスタイルになったきっかけはなんだったのでしょうか。 

「最初のきっかけは、三島由紀夫の本を集め始めたことですね。文学者としては珍しく、映画や演劇に出演したり、今でも世界的に有名な写真集「薔薇刑」や児童向けの絵本まで、彼の関連品は多岐にわたっており、蒐集しているうちに、彼と関わったいろいろな世界の人がいるのに気づき始めたんです。写真の世界だと、細江英公や薔薇刑撮影時のアシスタントをしていた森山大道、アート関係だと横尾忠則とかですね。すべて繋がっているということがおもしろくて、取り扱うジャンルは自然に広がっていったという感じです」

 
  
 

 
ジャンルの違うフロアが6つ、ひとつのビルに詰まっていてちょっとしたテーマパークに来ている気分になりますね。本に興味がない人でも、ビルの中を歩いているだけで楽しめますよね。 

「そう思ってもらえるとうれしいです。若い人にこういう文化を知ってもらうというのも1つの目標ですからね」

  
  
  

こういう文化というのは? 

「良い写真や本などをしっかり評価する文化です。良い物をたくさん見ていれば、本1冊何十万という値段が納得できるんですよね。本当にそれだけの情熱がこめられていますから。日本は、欧米に較べるとそういう文化が一般的にいまだ根付いていないので少しでも広がればいいなとは思っているんです。そのためには、まずお店で作品を見てもらうのが一番いいですからね。」

なるほど。それでは、そろそろ全部の階を見ていきます。
 
「どうぞ!それぞれの階にスペシャリストがいるのでなんでも聞いてください」

 
  
  
 

 
1階は写真集のフロア。
ブールス・ウェーバーや森山大道など人気の高い写真家の写真集が棚いっぱいに並ぶ。

 
「この階は、頻繁に来るお客さんも多いので、飽きないように本の入れ替えやレイアウトを変えるという作業はこまめに行なうようにしています」

  
  
  


 
2階は美術、デザイン関係のフロア。
 
「本だけではなく、横尾忠則の絵やポップアートのポスターなどあります。日本の古い刀の美術書とかもおもしろいですよ」
 
  
  
 


 
中2階は昨年の11月に本格始動したという。ファション雑誌や趣味の本がメインで、特に珍しいのは20年代〜50年第のアメリカ版『ヴォーグ』。
 
「本来は1万円前後するものを、傷ありは2000円で売っているんです。アヴェドンなどの有名な写真家が初期に撮った写真など掘り出し物が見つかったりするのがおもしろいですよ。

 
 
  
  
 


 
3階は文学が中心。稀少な本には説明付きで置いてあるからわかりやすい。こういうのを見ていると古本の世界にハマる気持ちがなんとなくわかる。
  
  
  
  


 
中3階は日本史や民俗学の本。歴史ある古い本が大量にあって、他の階とのギャプがおもしろい。いかにも神保町という風景。
  
  
 


 
そして、4階はオーナーこだわりの三島由紀夫の作品と有名な写真家の貴重なオリジナルプリントの作品が。

急ぎ足で見て回っても全部の階を見るのに1時間くらいはかかってしまう程すべての階が濃い内容。
それでは、そんなビルの中から本を掘っていきます!

 
 
 
 
 
  


 
1st DIG NEW YORK/WILLIAM KLEIN
「『ヴォーグ』で活躍していたウィリアム・クライン。ニューヨークのスナップを納めた写真集で、とにかくカッコイイ。多くの写真家に影響を与えたのもよくわかります。この本はリーフレットが付いているので、40万円で販売しています」

  
  
 
 

 
2nd DIG 新宿/渡辺 克巳
「新宿を中心に活躍していた流しの写真家で、ヤクザや娼婦などを相手に1組3枚300円で撮っていた人なんです。普通の人に混じって寺山修司とかも出てくるのがおもしろいですね。」

  
  
  
  
  

 
3 rd DIG 花ざかりの森/三島由紀夫
「これは三島由紀夫の処女作の初版本です。和紙刷と洋紙刷の二種類が出版されました、これは当時、物資が少なく紙の供給不足からなった事ですが、現在ではコレクターズアイテムになっております」
 
  
  

  
  
本だろうとフィギュアだろうと写真だろうと“残り続けている良い物”を徹底して探し続けるこのビルの気合いはすごい。
 

毎週のように神保町に通う玄人から、本に親しみのない若者までだれでも楽しめるという噂は本当だった。
 
 

渋谷、原宿に買い物に行くように、神保町に本を見にくるっていうのが遊びの定番になるんじゃないか、と小宮山書店に来ると本気で思う。おいしいカレー屋もいっぱいあるしね。

取材/文/写真/宮本 賢