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第12回 Shelf 齊藤祐太さん

profile:さいとう ゆうた。今年の11月で20年目を迎える老舗書店「Shelf」で2009年よりスタッフを務める。
◯東京都渋谷区神宮前3-7-4 ☎03-3405-7889 12:00-20:00 土日 12:00-18:00 無休
   
「本屋さんって、意外と多い」。この取材を始めて気づかされました。
住んでいる街に入ったことのない本屋がありませんか?
まずは入ってみて、できたら本屋の店主に好きな本を聞いてみると、思いもよらないおもしろい話が聞けるんです。
そこには、本屋を始めるきっかけになった本、人生を変えた本など、その本屋さんにとって大事な本が必ず存在する。
当たり前かもしれないけど、“本屋の主人の本の話”はおもしろい。
このブログでは、そんな本フリークな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。「Diggin’ Books」毎月更新!
 
 
 
 
 

写真集って持っていますか?「写真集」と聞くと、難解で高尚なイメージを持つ人も多いのでは? 「知識がないから分からない」「かっこいいけど、選ぶ基準に自信が持てない」そんな風に思って遠ざけるのはもったいない。
「写真集」には正しい読み方や眺め方なんてない。大事なのは、自分の感性やその時の心情と向き合うこと。そんなことを教えてくれる本屋さんが外苑前にありました。
 

 
東京メトロ外苑前駅で降りて、外苑西通りを明治公園の方へ歩き、ワタリウム美術館を通り過ぎたところにある写真集専門の本屋さん「Shelf」。賑やかな通りを一本入った静かな場所に位置している。
看板のロゴは、『QuickJapan』や『ガロ』などの雑誌のデザインをてがけていたグラフィックデザイナーの羽良多平吉さんによるもの。
 

 
今回お話を聞いたのはバイヤー兼、販売チーフを務める齊藤さん。齊藤さんは大学在学中からファッションやアートに多く触れ、かれこれ10年近く写真を撮り続けているとのこと。写真集の楽しみ方を教えて頂きました。
 

  

 
ありとあらゆる写真集がぎっしり詰まった写真集好きにはたまらない空間。
 
 

すごくたくさん写真集が並んでいますよね。どういったジャンルのものが多いですか?
「海外の写真集が8割、古書や国内の写真集が2割といった感じですね。新人の作家のものから定番のものまで揃えています。森山大道さんは人気があるので専用の棚を作っていますね」
 
 
 

 

 

ミニサイズのものや、タブロイド型の写真集もあるんですね。
「そうですね、手軽に手にとれるものもたくさんあります。これは、パラパラとめくることで写真が少しずつ変化していくもので、ギフトに買われていくお客様が多いですね。タブロイド(新聞版型)やジンなども人気です」
 
 
 

写真集は普段手に取らない人にとっては難しいイメージがあると思うんですが、そんな人でも楽しむためにはどうすればいいでしょうか?

「まずは映画とかファッションとか、普段親しんでいる作品やブランドと似た雰囲気の写真集を探すといいかもしれませんね。興味のあるものは好みが分かると思うので、その感覚で選べばいいと思います。写真集はいろんな種類のものがあるので、自分の好きなことがあればそれが入り口になりますよ」
 
 
 

なるほど。入り口が分かれば自分次第でどんどん面白くなっていくということですね。
「そうですね。一人好きな写真家が見つかれば、その人の写真集を見ていくうちに写真家の変化や、写真の意図が分かってきてどんどんハマりますよ」
 
 
 

齊藤さんが写真にハマったきっかけはなんだったんですか?
「昔から、アートは好きでした。派手なものよりも静かなイメージのものがすごく好きだったので、ルイス・ボルツを見て写真にハマりましたね」
 
 
 

一風変わった写真集とかめちゃくちゃ前衛的な写真集ってたくさんありますよね。プロの本屋さんはそういう写真を見てどう感じているんですか?
「わからないものはやっぱりわからないです(笑)ただ、わかる、わからないと言うより相性が大事ですからね」
 
 
そういう写真集はどう楽しめばいいんですか?
「一度そのイメージを頭にいれておけば、同じ写真家の写真に出会ったときに感じ方や見方が少し変わる気がします。この雰囲気、前に見たことあったなって。意味が分からなくても、そうやって気付けたりする楽しみ方もありますね」
 
 
 
 

小説や雑誌など文字があるような本と違う魅力はどんなところですか?
「文字で説明がされていない分、作者の気持ちや意図が分かると小説などを読んで感動したときとは違う感覚を味わえますね。あとは、写真集は見返していくうちに違う面白さに気付けたりするんです。最初見たときは意味が分からなくても、年を重ねたり、違う気分のときに見ると、“こういう意図があるのか”とピンとくる瞬間があるんです」
 
 
 
なんとなく、肩の力が抜けて、写真集のイメージも変わってきました。
 
 
写真集の“入り口”に立てたところで、DIGっていきましょう!
 
 
 
 

1st DIG Atelier Of Cézanne / Risaku Suzuki
「日本人の写真家、鈴木理策さんがアメリカのNazraeli Pressという出版社から出した写真集です。セザンヌのアトリエを訪れ、アトリエ内やその周辺での風景を撮ったものです。決して派手な写真ではないのですが、普通の写真からは読み取れないような空気感を感じ取ることができます。理策さんらしい静かなイメージがすごくかっこいいですね」
 
 
 

2nd DIG Reflection and Refraction / 森山大道
「2012年の香港国際写真フェスティバルに合わせて発売された森山大道さんの写真集です。香港のAsiaOneという出版社から刊行されたもので、日本でも同じ写真で出版されたのですがデザインやレイアウトのされ方、紙質などがまったく違うんです。お店にはサイン本もありますので、森山大道さん好きの人には是非チェックして欲しい一冊です」
 
 
 
 

3rd DIG Vulkan Oder Stein / Anne Schwalbe
「アンネ・シュヴェルベはベルリン在住の、今世界的にも注目されているアーティストです。これが3作目なんですけど、毎回同じ装丁で制作していて、1作目と2作目はすぐに完売してしまいました。この作品では自宅の周辺の草地や庭、砂とか鉱物などの日常を丁寧に撮っていて、男女問わず人気の一冊です。静かな世界観が見所ですね」
 
 
 
 

今まで写真集を敬遠していた人は「Shelf」へ行って写真集の“入り口”に立って欲しい。
「Shelf」へ行けば自分にぴったりの写真集がきっと見つかるはず。
 
写真の意味や凄いポイントがわからなくても、気がついたらページを開いていたり、同じ写真をずーっと眺められていたら、写真好きの“入り口”に立っている証拠だね。
 

取材/文 廣瀬 大士  写真/宮本 賢