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第21回 田口 章(27)庭師

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夢中なことがあったり、叶えたい目標があったり、誰にも真似できない自分だけの“何か”を持ってる人ってかっこいい。シティボーイってどんな人のことを言うの!? という問いの正解は決して一つではないけど、彼らが共通して持っているのは、そういう自分の興味に対する強いこだわりなのではないでしょうか。  
このブログでは、毎回1人のシティボーイに密着取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイの実態を調査していきます。
 
 
今月のシティボーイは白金高輪に住む田口章さん。大学卒業後、護国寺をはじめとした多くの日本庭園を手掛ける庭師のもとに弟子入り。現在は独立を目指し、庭師の仕事と勉強に励む毎日を送っています。

今回は自然を愛する彼のお宅にお邪魔して、日本庭園の未来を担う若き庭師の素顔に迫ってきました! 
 
『庭師ってなんだ?』
そもそも、庭師ってどんな仕事なの? そう思う人も多いはず。
まずは、田口さんの仕事や庭師になったきっかけについて聞きました。
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「庭づくりといっても、色んな種類があります。例えば、木を切ることはもちろん、新たに植物を植えたり、石を据えたり。色んな要素があって庭ができているんです。庭師によっても得意分野が違っていて、僕の師匠は石組みをすごく評価されています。普通、木を切るだけの庭師は4、5年。庭を一から作るには8〜10年の修行が必要だと言われているんです」
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「高校時代に、ある庭師が取り上げられたドキュメンタリー番組を見て庭師を知りました。当時は庭師になろうなんて思わなかったけど、生活の中に緑を取り込むという行為に感動したんです。大学進学で上京した後も自然に対する興味は続き、部屋に観葉植物を置いたり有名な日本庭園を見て回りました。それで、庭園について調べていくうちに1人の庭師を知って、弟子入りを直談判。最初は草むしりや荷物運びがほとんどでしたが、仕事を始めて3年、今は後輩もできて、週に1度、とあるお屋敷の手入れを任されています」
最近は新たに庭を作る仕事が少なくなり、弟子を取ることも減った庭師の世界。興味があることを仕事にするのは難しいけど、やっぱり大切なのはシンプルに『好き』という気持ちと『行動力』なんだね。

『作業に欠かせないもの』
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庭師で特徴的なのが作業着。古くから続く職業だから、作業着にも移り変わりがあるようです。まずは普段着ているものを紹介してもらいました。
「新宿にある『作業着屋』によく行きます。普段はシャツにズボン。そこに動きやすいよう足にはロングソックス、手首には鉄甲と呼ばれるサポーターをつけます。ズボンは乗馬用のパンツみたいにテーパードになっているんです。乗馬用のものではないんですが、名前はそのまま『乗馬ズボン』です(笑)。今日着ている鯉口シャツは藍染めで、まだ色が濃いですが、風合いが出てくるのが楽しみです。先輩の中には、作業着にもこだわりを持ってオーダーメイドする人もいるんですよ!」
写真上段、右のパンツはコーデュロイ仕様で冬用のもの。庭師の作業着がこんなに洒落てるなんて知らなかった! 普段着としても履きたくなるくらいかっこよかった。
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お次はクラシックスタイル。今日着ているのは親方から譲り受けたもの。
「これは江戸時代の庭師と同じ格好です。ズボンではなくて股引を履き、エプロンのような腰掛けをするのがポイントですね。足には脚絆とよばれるサポーターを付けます。これらもすべて藍染めのものです。着付けが大変なので、普段は乗馬パンツを履くことがほとんどなんですが、やっぱりこの格好のほうが庭師という感じがします」
藍染めの作業着が好きだと言う田口さん。仕事着にもこだわりを持つのはシティボーイの性。

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剪定バサミや木バサミなどの細い枝や草を切るためのハサミ、木の種類に合わせたノコギリなど、仕事に必要な道具はたくさん(写真に入りきらなかった!)。移植ゴテは親方から譲り受けた大切なものだそう。暖かい時期は蚊取り線香も欠かせない! 
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田口さんのお気に入りは柄の長い刈り込みバサミ。
「刈り込みバサミは、刃が安定しないので、草が切れずに刃に挟まってしまうんです。片方の刃を固定して、すばやく動かすと上手に切れます。コツを掴むと、クセになる切れ味です!」
そう言って、雑草の草を切る田口さん。この取材の中で彼のテンションが1番あがった瞬間でした。
 
『D.I.Y.と盆栽』
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田口さんの趣味はD.I.Y.! 家具のほとんどが手作りです。
「庭師になる前からものを作ることが好きでした。家具のほとんどは自分で作った自信作です! 1番こだわったのは廊下の本棚。狭い空間でも圧迫感を感じないように、床と棚には同じ材質を使いました」
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緑を多くとりいれた田口さんの部屋。窓際やベランダには庭師らしくたくさんの盆栽が。
「盆栽は大学時代から集め続けています。素焼きの器を探しに埼玉のほうまで出向く事もありますね。最近では知り合いの人にも盆栽作りを頼まれる事があるんです。盆栽は庭と違って場所も取りません。生活の中に取り入れやすいものなので、ぜひ色んな人に興味を持ってほしいと思います」

庭だけにこだわらず、今の生活に合った緑の楽しみ方を考える田口さん。日本庭園の新しいかたちも作っていけそうだ!

『有栖川公園へ』
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田口さんが1番好きなのは木に登って枝を切る作業。せっかくなので取材の最後は有栖川公園へ。木登りを披露してもらいました!
「作業着で木に登っていると外国の方に『忍者がいる!』って言われることがあるんです。これは、庭師あるあるですね(笑)」
5mほどの高さまで、あっという間に登ってみせる田口さん。実際の仕事では高さ20mの木に登ることがあるそうで、今日はまだまだ低い方なんだとか。
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今は独立をめざして勉強に励む田口さん。
「今は植物の名前を調べたり、庭や空間づくりに関する本を見たりするようにしています。そういう作業を通して、自分が好きなものは何か、将来どんな庭を作りたいのかを把握するのはすごく大事だと思うんです。まだまだ先は長いけど、これからも自分の好きな空間は何かを追求して、いつか自分の庭を作るときに見てきたものを発揮したいです。将来、岐阜にある下呂の実家にも自分の庭を作りたいですね」

興味を持ったことを突き詰めて、それが仕事になるというのはシティボーイにとって理想の生き方のひとつ。でも、もっと大事なのは田口さんのようにその夢の第一歩を踏み出した後も、それを楽しめるかどうかということ。

趣味も楽しんで、色んなところから感性を磨く彼の庭。完成するときが楽しみだ!

こちらから彼の作る盆栽がチェックできるよ!
https://www.facebook.com/kokemusu

取材/文/写真 飯野僚子