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第32回 谷中大和(19)


夢中なことがあったり、叶えたい目標があったり、誰にも真似できない自分だけの“何か”を持ってる人ってかっこいい。
シティボーイってどんな人のことを言うの!? という問いの正解は決して一つではないけど、彼らが共通して持っているのは、そういう自分の興味に対する強いこだわりなのではないでしょうか。  
 
このブログでは、毎回1人のシティボーイに密着取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイの実態を調査していきます。

今月のシティボーイは渋谷の宮下公園を拠点にBMXに乗りながら、BMXのストリート映像を発信する『hydra kult』のメンバーとして活動する谷中大和さん。
2月号の本誌「Style Sample’16」にもBMXと一緒に登場してくれた19歳のフレッシュボーイ。スナップした当時、渋谷のスクランブル交差点でBMXを押しながら歩いてる様子が妙にかっこよくて声をかけたんだっけ。
「渋谷のBMXライダーの様子を映像にまとめて発信してるのでよかったら見てください!」というわけで動画を見てみるとこれがまたイケてたわけで。

それ以来彼の活動をSNSでチェックしてたら、彼らのライディング映像が世界中のライダーが注目するウェブサイト『RIDEbmx』で取り上げられたり、イギリスはリバプールで颯爽とライディングしていたり、活躍の場を広げている様子。なぜイギリスに? そもそもBMXの魅力ってなんだ? 聞きたいことがありすぎて、会いに行ってきました。


待ち合わせの場所センター街に向かうと、同じく「hydra kult」のメンバーの一人であるサムさん(左)も駆けつけてくれていました。
「メンバーは僕とサムを含め7人。全員映像制作の初心者で、そのときによって撮影、編集の役割は変わります。スキルはないから下手な映像だけど、ライディングだけじゃなくて渋谷のストリートの様子を入れて、他のローカルのライダーも楽しめるように気をつけています」
彼らが映像を作り始めて1年。そのきっかけは?


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「BMXのライダーは“渋谷ローカル”だとか“新宿ローカル”みたいに自分の住んでる街を拠点に乗っているんです。パークやその土地の道路の環境によってできる技やBMXのカスタムも変わるから、そういうスタイルの違いを共有するために動画を作り始めました。例えば渋谷はポール状のガードレールが多いので、ペグというタイヤの中心につけたパイプを使って縁石やポールの上を滑る技をよくします。でも、西東京ではこういう障害物が少なくて、壁を走ったり、階段を使ったりする技が盛ん。場所によってはこのペグをつけてない人もいるんですよ!」

BMXと一口に言っても住むエリア、ライダーによってカスタムと技の違いがこんなにあるのか! 奥深い。

 

写真上が谷中さん、下がサムさんのバイク。このカスタムになって2週間ほど。
「本体のフレームは同じ渋谷ローカルの先輩にもらったものです。友達同士で部品を交換したり、激しい動きですぐにどこかの部品が痛むから1週間、2週間単位でカスタムは変わります」
どんなにカスタムを繰り返してもサドルを低くするのは絶対! 低いほうがかっこいいし、邪魔にならないんだとか。たしかに(写真下)サムさんのものと比べると低い。



左右のハンドルを繋ぐバーも個性が出る部分。写真上から谷中さん、サムさんのもの。
「僕のバーはサムに比べて低いんです。乗る時に腕に負担がかかりやすいけど、その分力が入って高く飛んだりするのに向いています」
「僕はマサ(谷中さん)のカスタムではまったく技ができないんです」とサムさん。見た目には違いがわかりづらいけど、その人にとっての乗りやすさの違いは歴然。まさにバイクとは一心同体。

渋谷のパーツショップ「arktz」に場所を移してさらに谷中さん流のカスタムについて話を聞くことに。
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拠点の宮下公園からもほど近いこの店はスケボーとBMXのパーツを扱う、渋谷ローカルのライダーにとって欠かせない場所。通い続けて今では店員さんとも仲良し。この日まず谷中さんが気になったのはタイヤ。技を決める上でかなり重要なパーツの一つ。
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「BMXのタイヤは幅の種類が豊富で、重さもかなり変わるから選ぶときは慎重になります。1.9〜2.5というサイズ表記の中で細かく太さが刻まれるんですが、僕はちょうど中間くらいの2.2、2.25がお気に入りです。太すぎるとバイク自体が重たくなってしまうし、細すぎると安定しない。縁石の上をすべるグラインドという技がしやすくて、渋谷ローカルの僕にとってはすごくバランスがいいサイズなんです。今は<eclat>というブランドの「PREDATOR」を狙ってるんですが、ちょっと高級なもので買うのを躊躇しているんです……」
次に案内してくれたのはハンドルのグリップが置いてあるコーナー。


常に握っているから消耗も激しいし、お店に行くと必ずチェックするんだとか。写真下、谷中さんの今のグリップは使って約2週間でこの通り。


お気に入りのグリップは<FEDERAL>のもの。
「僕が好きなドイツのライダー ブルーノ・ホフマンのサポートをしているブランドです。彼は動きが独特で、いつも彼のライディングに驚かされるんです。そんな彼も使ってると思うとテンションが上がります! これ、棚の下のほうの目立たないところに置いてあって、ポピュラーなものではないんです。自分だけが良さをわかってる、みたいな優越感があります(笑)」
憧れの存在って大きい。実は先日、東京で開催されたイベントに出場したブルーノとついに対面、一緒にライディングを楽しんだんだとか!


「外国からの観光客が集まる渋谷にはやっぱり海外のライダーも多く集まるんです。スクランブル交差点みたいにみんなが行きたがるスポットも近いし、アテンドしながら交流できるのが渋谷の魅力だなって思います。仲良くなったライダーがinstagramに僕たち渋谷ローカルの写真を投稿して、そこから他のライダーもメッセージをくれて日本に遊びに来てくれることもあるんです」
もちろん逆もしかり、谷中さんが今年イギリスに向かったのもinstagramがきっかけ。

 

「<DUB>というリバプール発のBMXカルチャーから生まれたアパレルブランドが大好きで、デザイナーのジャックのアカウントにメッセージを送ったんです。彼の住む家がスタジオにもなっていて、直接そこで買い物をしたいと思って。すると返事をくれて、会えることに。スタジオにお邪魔するとたくさんステッカーをくれたり、彼のブランドのサポートを受けているライダーを紹介してくれたり、充実した時間でした」

そこで出会ったライダーが谷中さんと同い年のリアムさん。なんと谷中さんがホームステイをしていた家と同じ通りに住んでいたそうで毎日のようにBMXのスポット巡りをしたんだとか。

「リバプールはレンガ作りの建物が多くて、その壁を伝って走ったり、渋谷とはまったく違う環境で新しい技に挑戦できて楽しかったです。パークの種類も多いから、滞在した2ヶ月半のうちに色んな場所で乗ることができました。それ以来、技自体を極めるよりも知らない場所にも出向いて、その環境でどう工夫して滑るか考えるのが楽しいです。もうすぐリアムが日本に遊びに来るので、今度は東京ならではのBMXスポットを紹介したいですね」

そもそも谷中さんがBMXを始めたのは小学生のとき。「BMXはご飯を食べて寝るのと同じくらい生活の一部です」という彼。こうやって一つのことを飽きずに続けられるのは、軸に常に自分なりの視点を持って楽しんでるからなのかも。最後はサムさんも一緒に彼のローカル、宮下公園でライディングを披露してもらいつつ話を聞きました。

「恵比寿の駅前でBMXに乗るお兄さんの集団に憧れて話しかけたのが始まりでした。そこから自分もバイクを買ってどんどんハマり、半年後には大会にも出場しました。でもそこで顔から転んで怪我をしてからこわくなってしまって、高校生になるまで休んでたんです。でもやっぱり周りの友達が乗っているのを見るといてもたってもいられず……4年前に本格的に再開しました」
披露してくれたのは“グラインド”という縁石にペグをひっかける技。実際に目の前で見るとかなりの迫力。


サムさんいわく、「バースピンというハンドルから手を離してハンドルを一回転させる技があるんですが、これは“ビビリ技”と呼ばれていて、実際技術的な難易度は高くないけど、怪我をする可能性が高いからみんなあまりやりたがらない。でも先日マサが成功して、そのときは宮下公園のライダーみんなで歓声をあげました。すごいです、本当に」
怪我を乗り越えて再びBMX生活を始めた谷中さんの勇気と姿勢は、サムさんをはじめ周囲の仲間の心を打つ。

谷中さんはこれから映像製作にさらに力を入れたいんだとか。
「最近hydra kultのメンバーが横浜のパークに遊びに行ったら、地元のライダーが僕たちのことを知っていてくれていて、自分のローカル以外ともBMXの楽しさを共有できている感覚がとにかく嬉しかった。これからは他の地域のライダーとも協力して映像を作っていきたいですね!」

hydra kultの作品はこちらから!
Blogでも活動の様子がわかるよ。

取材・文 飯野僚子