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第34回 金柑画廊 太田京子さん


profile:おおた・きょうこ|2006年にギャラリー『金柑画廊』をオープン。2009年より古本を中心に書籍も置くギャラリーとして営業。2013年4月より出版物を制作するキンカンパブリッシングの活動を始める。◯東京都目黒区目黒4-26-7 ☎︎03•5722•9061 12:00〜19:00 月・火・水休(祝日の場合はオープン)

「本が読みたいなあ」って思うときほど、面白い本が見つからなかったりするから不思議だよね。だったらいっそ街に出て、本選びのプロにおすすめを聞いてしまおう!

このブログでは、本が大好きな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(Diggin’ Books)の魅力を教えてもらいます。今月も張り切って行ってきます!

本誌『僕の好きなアート』特集でいいアートをたくさん見ていたら、アートの本にもどんどん興味が湧いてきた! でもいいアートブックってどこにあるんだろう。そんな中見つけたのが、ギャラリーと書店が融合したスペース「金柑画廊」。国内のアーティストを中心とした展示をしながら、美術・デザイン関連の古書を販売しています。期待を胸に店主の太田京子さんに会いに行きました。


店は目黒駅と学芸大学駅のちょうど中間地点。ガラス張りのthe・ギャラリー! な佇まいの前には、僕らを引きつける本のラック! 小さなギャラリーってちょっと緊張しちゃうけど、これなら一気に親しみがわいてくる。



展示スペースと本のコーナーはミックス加減で配置されていて、いい意味で雑然とした様子がギャラリーらしくなく、これまた居心地がいい!



本は神田にある『テトカ』の手塚敦嗣さん(AZTECA BOOKS) と『aho aho expo』や『ワンコイン古着』の著者である中嶋大介さんによるセレクトが中心。店内奥には太田さん自身の選書もあって、テーマはいずれもアート・建築・デザイン関連。



この日やっていた展示は写真を使ったコンセプチュアルアートを手がける作家マジック・コバヤシさんによるもの。太田さんが優しく解説してくれました。
「彼は写真を使った表現を中心に作品を作っている方。写真ってフィルムやポラロイドなど、ある意味物質的なものから、近年はデジタルでデータのようなものに変わっていきましたよね。その中で写真は一体どういうものだろう? ということをテーマにしています。例えば、本棚の上のコーナーの展示は劣化したポラロイドを使って撮影し、それを複写したもの。“モノ”としては写真であるけど、写真の役割である被写体を写すという意味では機能していません。でも、確かに写真ではあるんですよね」


「これはラリー・クラークの写真を原寸大に複写し、マジックさんのオリジナルでトリミングしたもの。以前にラリー・クラークの展覧会があって、そこで購入した写真なのだそうです。原本も展示していますが、これはたしかにラリー・クラークが撮影した作品。でも、複写をしたときにこれはマジックさんの作品だし、ラリー・クラークの作品とも言えます。このように、これは誰の作品なのか? どこに作家がいるのか? 被写体を鮮明に記録する写真だからこそ生まれる疑問でもありますよね」
他にも今会期中の展覧会をテーマにした作品があったりして、ちょっとアートにハードルを感じる私でも「おっ!」と思える瞬間が。何より太田さんの解説がわかりやすすぎます。このマジック・コバヤシさんによる展示『PreView』は11月13日(日)まで。

そもそも、太田さんはなぜギャラリーと書店を合わせた場所を作ったんだろう?

「京都の芸大を卒業して、私自身仕事をしながら彫刻などの作品を作っていたんです。でも、昔は貸しギャラリーというと1週間で15万〜20万円とレンタル料が高い場所がほとんどで、気軽に発表できる場がありませんでした。そんなときに友人の紹介でこの場所を知り、10年前に店を始めました。とはいえオープン当初は、純粋な場所貸しのみで、他で仕事をしていた私はほとんどただの大家さん状態。作家さんとのつながりがあまり持てず、すごく残念でした。今のスタイルになったきっかけは2009年に『テトカ』の手塚さんにお声がけして開いた、古本を展示するイベントです。そこで色んな古書店の方と知り合って準備をするなかで、本を販売しながら展示をすれば、私自身が在廊できると考えたんです。本があることで、展示目的でない人がふらっと立ち寄って作品を見てくれる機会ができたのもすごく嬉しいです」

自身も作品を作る人だからこそ、展示をするアーティストと作品を見る僕たちをうまく繋いでくれる太田さん。その熱い思いから、『キンカンパブリッシング』として展覧会のカタログまで出版しているんだとか!



「初めて作ったのは2013年に私自身が趣味で集めた古い絵はがきの展示をしたときでした。もともとカタログのあるギャラリーというものに憧れていて、ぜひここの展示の様子も思い出として、お客さんに持ち帰って欲しいという思いから作りました。場所柄、アクセスも悪いのでここに来ていただくこと自体がありがたいこと。感謝の気持ちでもあります!(笑)その後、今年から本格的に出版の活動を再開して、4月以降ここで企画展示をしている方のカタログは毎回作っています」
たしかに、小さな規模のギャラリーでカタログを発行しているところってなかなかない。こういうふらっと立ち寄って偶然出会った作家の作品ほど心に残ったりすることもあるし、作品は高くて買えないけど……っていう人にも嬉しいよね。




「カタログを作るときはアーティストの企画の意図を汲み取りながら、最終的なアウトプットは私に任せてもらっています。作家と打ち合わせをする中で私もより作品を理解できたり、作家自身も展覧会についてより真剣に考えてくれたり、とカタログを作ることで展覧会自体の準備もスムーズになりました。マジック・コバヤシさんのは準備がギリギリで間に合わなかったのですが……(笑)」
写真中央はイラストレーター中澤季絵さんの展覧会『エメラルドピクニック』のときのカタログ。エメラルドをイメージしてページの途中に石の形で紙を切り取ったり、展覧会のギャラリーの様子の写真を差し込んだり、とそのときの空気感が伝わる!
展覧会ごとに大きさや内容を変えていて、ポスターセットだったり、作家さんが書き下ろしたサインだったり、太田さんと作家さんの愛を感じます。

こうやって作家の人柄が作品以外の部分でわかると、難しいと感じるアートだってちょっと身近に感じたり、自分なりに噛み砕いて楽しめる気がする。
次に、販売している本の中からもそんなアートの入り口になる1冊を見せてくれました。


「これは『現代アートシーン』という1960年代から80年代にかけて活躍した日本の現代美術のアーティスト200名以上を紹介した本です。特徴はどれも作品ではなく、作家とそのアトリエを大きく取り上げているところ。制作シーンや作家の顔、普段の様子を知ることができるんです。私は村井正誠さんという画家の作品がポップで大好きなのですが、この本で実際にどんな人なのか、どんな場所で絵を描いているのか知ることができました。この本で初めて知るアーティストもいると思います。作品だけをいきなり見るのではなく、こうやって作家のパーソナリティから興味を持つのも一つの手かもしれません」
写真は『美術手帖』などで30年以上にわたって美術家を撮影してきた写真家酒井啓之氏によるもの。その道で信頼されてきた彼だけに見せる作家の表情はどれも活き活きして見える! 200名以上もの作家が収録されているから、きっと気になる作風も見つかりそうだ。

というわけで今月もDIGっていきます。
アートがもっと楽しくなる3冊!

1st DIG『アンディ・ウォーホールの展覧会図録』


「アンディ・ウォーホールの1987年にNY開催された展覧会のカタログです。モノクロですがシルクスクリーンの作品だけでなく、ペインティングの作品も収録されています。表紙のイラストもウォーホールによるもの。セレブリティの写真やキャンベルスープの缶を使ったシルクスクリーンの作品が有名ですが、彼自身が描いたイラストもすごく魅力的です。とても可愛らしい絵を描いていました」
失礼ながら、やっぱりウォーホールって絵が上手いんだ! と驚き。もちろん? キャンベルスープの作品もこのときから作っていました。

2nd DIG『Collection of comical one-act plays performed by Christian Boltanski』クリスチャン・ボルタンスキー


「東京都庭園美術館でも展覧会を開催中のフランスのアーティスト クリスチャン・ボルタンスキーの1970年ごろの作品集です。生と死など、シリアスで暗い印象のある彼の作品ですが、根底にあるテーマは変わらずとも、どこかお茶目でギャグっぽい作品も残しているんです。彼に限らず、コンセプチュアルアートって実は単純に面白い作品も多いんですよ」
ボルタンスキーの顔芸?! 意外すぎるし可愛すぎる。

3rd DIG『Notes in Hand』クレス・オルデンバーグ

「巨大なハンバーガーや巨大な手袋など、日常にある身近なものを巨大な彫刻のパブリックアートで表現したアーティスト、オルデンバーグのアイデアノートです。実は彼の彫刻しか知らなかった頃はよくわからないなあと思って、あまり興味がなかったんです(笑)。でも、この本で彼のハンドライティングやアイデアソースが面白くて好きになりました」
パーソナルなノートってやっぱり見るとわくわくする。アイデアノートといえども純粋に作品として楽しめるくらいイラストがたくさん。


小さなギャラリーに行くのってちょっと玄人っぽいと思って緊張してたけど、『金柑画廊』なら本を入り口にふらっと入れる。ギャラリーとミュージアムショップがぎゅっと濃縮されたような場所でアートに溺れてみよう。

11月13日(日)には現在展覧会を開催中のマジック・コバヤシさん(https://twitter.com/magickobayashi)と、主にインターネット上で購入、捕獲した生物などをモチーフとした写真作品を製作する大野真人さん(http://www.makotooono.com)とのトークイベントを開催。その後も11月17日から12月18日までは水田茂夫さんの未確認生物をテーマにした(!)ペインティングの展示「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」を開催予定。その後は本誌111ページにも出てくれたahoahoさんこと、中嶋大介さんの展示も開催予定! 詳細は下記またはHP(http://www.kinkangallery.com/)にて。


マジック・コバヤシ M Magic Kobayashi 「PreView Talk」|ゲスト 大野真人 Makoto Oono

This is Chanel not LV/マジック・コバヤシ
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マジック・コバヤシ M Magic Kobayashi 「PreView Talk」
ゲスト:大野真人 Makoto Oono(写真家・アーティスト)
11/13(日) 15時~
入場料:¥1000- ワンドリンク付
※ 予約
kinkangallery*gmail.com(*を@とご入力ください。)件名:「トークイベント11/13」でお名前・メールアドレス・お電話番号・人数をご記入ください。
お電話でも受け付けております。お気軽にお問い合わせください。 03-5722-9061: 金柑画廊 太田まで
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マジック・コバヤシ「PreView」
2016.10.22.土-11.13.日
12:00-19:00
木・金・土・日・祝 開催
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