マガジンワールド

第15回 守屋成章 (24) サウンドデザイナー

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「Magazine for City boys」をスローガンとしてリニューアルをしたPOPEYE。このブログでは“どこかにいるはず”のシティボーイ“を捜索。彼らの地元「ホームタウン」を巡りながらそれぞれの“シティボーイらしさ”をリサーチしていきます。例えば、スケーターの履くVANS、職人の使う道具がかっこよく見えるのは、それぞれに真似のできないスタイルがあるからではないでしょうか? 
 
何でも似合うことより、その人にしかないスタイルがあることこそ“シティボーイらしい”と思うのです。
このブログでは、そんな独自の持ち味を持ったシティボーイを探して行きます!
「シティボーイを探せ!」毎月更新!

大人になる過程で誰もが一度はゲームにハマったことがあるはず。「大人になったらゲームなんてやらない」なんて、子どもの時には思っていたけど、ゲーム機がどんどんハイテクになっていったり、スマホのアプリでいろんなゲームが楽しめちゃうんだから、ゲームは僕らにとってまだまだ身近なモノなのかも。
ゲームをしていると子どもに戻った気持ちになる。でも、子どもの頃には気にもしなかったことが気になってきたりする。
例えばゲームの「音」って誰がどんな風につくってるんだろう。とかね。

今回のシティボーイは「サウンドデザイナー」として働く守屋さんを取材。
サウンドデザイナーとは、ゲームや映画の効果音やBGMを制作する仕事。例えば、服がこすれる音だったり、恐竜の卵が転がる音だったり….

そんな職業があるの知ってました?

「行きつけ」
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SONY DSC 小さい頃から、ゲームとラーメンが大好きだった守屋さん。生まれ育った雪谷にある行きつけは、ラーメン屋さんとBOOK OFF。このBOOK OFFで、ゲームを買ってからラーメン屋へ行くのが鉄板コースだったとか。小学生の時、「いつもの」と言って、同じメニューが出てくるように毎日のように通っていたそうですが、残念ながら叶わず終い。シティボーイにとって「いつもの」は永遠の課題。
「この『メタルギアソリッド3』というゲームがきっかけで、ゲームの音にハマったんです!足音やサイレンの音がいろんな方向から聞こえたりしていて、このゲーム以降、ゲームの音のレベルがすごく上がった気がします」

ちなみにBGMはスーパーファミコンの「スーパードンキーコング」が一番のお気に入り。どのシーンにも、必ず最適な音楽がかかっているんだとか。
 
 
「東急池上線」
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SONY DSC 五反田と蒲田の間を走る池上線。都内を走る電車ですが、その知名度は意外と低い。乗ったことのない人も多いのでは?
「都内を走っている電車なのに、少し田舎っぽいというか…車両も少ないんです。交通の便はすごく便利というわけではないんですが、“都心にある田舎”っていう感じが、なんか落ち着くんですよね」
 
 
「車で移動」
SONY DSC 今回で15回目を迎えるこのブログでも初めての「ドライブ取材」。会社の社長に譲ってもらったお気に入りのコンパクトカーに乗せてもらって、作業部屋へ移動します。
「TOYOTAのIQっていう車なんです。それにしてもこの車、超小さくないですか?(笑)」
 
 
「作業部屋」
SONY DSC 去年の7月から、ゲーム制作会社で働いている守屋さん。サウンドデザインの部署は守屋さん一人だけ。上司も部下もいません。
「無音の映像に、想像力を働かせて最適な『音』を付け足していくんです。ゲームや映画の99%は、『音』をあとから付けているんですよ」
 
 
 
SONY DSC 「将来なにをしたいか考えたときに、映画をつくりたいなぁとぼんやり思っていたんです。ちょうどその時に、3Dの『トイ・ストーリー3』を見て、これだけリアルに、人形を動かしてる人ってすごいな…って感じたんです。でも冷静に考えたら、コントローラーでキャラクターを動かしてるのって、ゲームにすごく近い、むしろ映画より相互性があって面白いな!という風に考えるようになったんです。しかも、『トイ・ストーリー』って音もすごいんです。例えば、ポテトヘッドのパーツが外れてバラバラになるシーンですね。あのシーンは是非見て、音を聞いて欲しいです。音もすごいんですが、ストーリーを左右しないようなシーンにあそこまで力をいれてるのってすごいですよね。そこから色々と調べて、サウンドデザイナーという仕事を知りました。昔から映画や音楽は大好きでしたが、ゲームって全てのサブカルチャーの要素が全て詰まってるので、サブカルの王様だと思うんですよね(笑)」
 
 
SONY DSC 周りの人が就職活動をしている中、サウンドデザインの勉強を始めた守屋さん。
右も左もわからなかったので、独学で勉強をして技術を磨いたそう。わからないことを人に聞くのは簡単だけど、独学で勉強する姿勢はかっこいい。
「まずは、サウンドデザイナーの人のBlogを読んで、写真に映ってる機材を真似して集めました。使い方とか性能とか、全然分かんなかったんですけど、プロがこれ使ってるならとりあえず、買おう!みたいな(笑)カタチを真似するところから入りましたね」

これだ!と思うものが見つかってからのスピード感は大事。
「思い立ったが吉日」はシティボーイにとって大事なキーワード。常に頭の片隅に置いておきたい!
 
 
 
SONY DSC 独学で何かを習得する難しさは、やったことがある人には分かるはず。勉強の内容はもちろん、24時間365日自分の生活をコントロールするのは容易ではありません。
「毎日ソフトや機材と格闘してました。どういう作品を送れば良いのかも分からなかったので、無音の動画に自分で効果音を付けたサンプルをつくって、ゲーム制作会社に送っていました。でも中々通らなくて、モチベーションを維持するのがすごく大変でした。あの時期があったからこそ、自分のつくる音を必要としてくれる人のありがたみが分かりますね。絶対あの頃には戻りたくないので(笑)」
 
 
SONY DSC 「相手の欲しい音をつくることが全て」がモットーの守屋さん。サウンドデザイナーは自分の好みやオリジナリティを重視するのではなく、相手が求めているものをつくるのが仕事。なので、守屋さんは自分のつくった音を「作品」とは呼びたくないんだとか。

「例えば、『恐竜の卵が転がってる音をつくってください』って依頼がくるとします。でも、恐竜はもちろん、恐竜の卵なんて絶対に手に入らないじゃないですか。なので、身の周りにある『恐竜の卵っぽいもの』を色々転がして録音してみるんです。これは、スピーカーなんですけど、転がすと恐竜の卵っぽく聞こえる瞬間があるんですよ」
 
 
SONY DSC スピーカーの角をたてて転がしたり、平らな部分を中心に転がしたり、軽く放ってみたりする守屋さん。
確かに、一瞬「恐竜の卵を感じる音」がします。
「あとは、草原を転がってるのか、土の上を転がってるのか、それとも雪の上を転がってるのか。ゲームの設定で卵はどれくらいの大きさなのか。そういうところまで考えてつくりますね。最後に、スピーカーやヘッドホンなど、出力するメディアによって音にバラつきがでないか確認します。最近だと、『モンスターハンター3G』が一番音のクオリティが高かったですね。DSのスピーカーで聞いても、キレイに聞こえる処理がされてました」
 
守屋さんいわく、2、3秒の音をつくるのに2ヶ月近くかかることもざらなんだとか。
 
 
 
SONY DSC 守屋さんに会ったあと、今まで聞き流していた音に興味がわいてきた。改札でsuicaをタッチした時の音やiPhoneをロックした時の効果音もなんだか、今までと少し違って聞こえてくる。

多くの人が見落としてしまうモノや、聞き流していた音を誰がどんな風につくっているか。たまには、そんなことを考えてみるのも面白いかも。

映画もゲームも、盛り上がるシーンは盛り上がって当たり前。シティボーイはそこに至るまでを支えてる縁の下の力持ちがいることを忘れずにいたいね。

取材/文/廣瀬大士 写真/宮本賢