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第20回 和久井幸一 (25) 大学生/映像作家

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 夢中なことがあったり、叶えたい目標があったり、誰にも真似できない自分だけの“何か”を持ってる人ってかっこいい。シティボーイってどんな人のことを言うの!? という問いの正解は決して一つではないけど、彼らが共通して持っているのは、そういう自分の興味に対する強いこだわりなのではないでしょうか。  

このブログでは、毎回1人のシティボーイに密着取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイの実態を調査していきます。

今回のシティボーイは西荻窪に住む、映像作家を目指す和久井幸一さん。今年の春にはアシスタントを務めた短編映画『八芳園』がカンヌ映画祭にノミネートされて、憧れの地カンヌへ行って来た! という彼。現在は大学に通いつつカメラマンのアシスタントをする傍ら、ライブ映像の撮影に力を入れています。

今回は彼の愛する西荻のスポットを巡りながら、映像を愛する彼の素顔に迫ります!
 
『善福寺公園』 
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まずはお気に入りの撮影スポット善福寺公園で、映像に興味を持ったきっかけについて聞きました。
「僕が最初に映像に興味を持ったのは小さい頃、映画好きの父の影響で『ゴジラ』を観たのがはじまりでした。その後黒澤明や岡本喜八の監督作品を好きになって、フェリーニの『アマルコルド』という作品で完全に映画の世界にハマってしまったんです。高校生のときは渋谷にあったシネマ•アンジェリカや東劇へ通っていました。でも、実際に自分で映像を撮るようになったのは大学入学後。最初は映画を見るだけのつもりで映画研究会に入ったのに、いつの間にか自分の作品を作りたいと思うようになったんです」
一つのことにとことんハマると、D.I.Y.精神が出てくるのはシティボーイの性かもしれない。
 
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和久井さんの相棒は<Canon>の5D Mark III。今日は実際に撮影のデモンストレーションをしてもらいました。今はこのカメラでミュージシャンのライブ映像を撮ることに力を入れているそう。
「単焦点レンズをよく使いますが、曲のパートによってどの演奏者にピントを合わせるか選ばなきゃいけないんです。彼らの動きや表情の動きに合わせて、被写体を選んで撮影するのが楽しいですね。ライブ映像は、演奏者の動きを追う小さなドキュメンタリーだと思います。なので、1本1本が一つの作品になるように意識して撮っています」 

和久井さんのライブ映像は演奏者の表情がはっきりわかるのが特徴。映像を観ていると、その会場でお酒を飲みながらライブを観ている気分になるから不思議だ。 
 
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「ライブ映像を撮るようになったのは、映像作家ヴィンセント•ムーンの存在が大きいです。彼の『テイク•アウェイ•ショー』シリーズを観て、演奏者の動きをカメラでとらえることの面白さを知りました。これは、世界中のアーティストを記録したものなんですが、二階堂和美さんと友川カズキさんを写したものが特にお気に入りです。今年の春、彼がコロンビアで制作したドキュメンタリー映画『Esperando el Tsunami』の自主上映もしました。スペイン語の映画に自分で日本語字幕をつけたんです。そして先日、彼が吉祥寺バウスシアターの特集上映のために来日して、ついにお会いすることができました!」
大学でスペイン語を学んで、さらに映像の世界での活動を深めていく和久井さん。実はスペイン語を勉強したのも、映画を愛する彼らしく、1人の俳優がきっかけでした。
 
『天本英世さんとスペイン』 
OLYMPUS DIGITAL CAMERA 西荻窪駅近くの行きつけの店『DANTE』へ。
俳優 天本英世さんの『スペイン巡礼』という本を見せてくれました。これは彼の宝物。

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「天本さんは僕が映画に興味持つきっかけにもなった、岡本喜八監督の作品によく出ていた人でした。彼はこの本でスペインの情景だけでなく、生きるということについても書いていて、すごく面白いんです。彼の遺骨は、グアダルキビールという川の源流で散骨されたんですが、いつか自分も彼の旅路をたどってその散骨場所に行きたいと思っていました。それで大学でスペイン語の勉強をはじめて、ついに一昨年行くことができました。彼の友人で遺骨を散骨した真花さんという方に連絡をとり、実際にグアダルキビール川にも行ったんです」

好きな俳優が見た景色を、実際にこの目で確かめたかったという和久井さん。
憧れて向かった念願のスペインには、今の活動につながる出会いが待っていた!
 
『アコーディオン』 
 IMG_1764 「サラマンカの教会の裏道でアコーディオン弾きのルーマニア人男性と出会ったんです。人通りが少なくなるとルーマニア語の曲を演奏しはじめて、不思議なメロディに乗せて歌っていました。聞き入っていたら彼に『アコーディオン弾くか?』と聞かれて、ずっと楽器を演奏してみたかったし、教えてもらうことに。タバコとカフェオレが授業代でした(笑)。それからはいつも学校帰りに彼に会いに行きました。外国語で一からコードのことを勉強するのは難しかったけど、それがまた楽しかったです。いつか彼と再会して一緒に演奏したいな……」 
 
『大好きな居酒屋』 

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最後は彼が西荻窪で1番愛する居酒屋へ。音楽好きなマスターが営むこの店では、ライブも行われているんだとか。和久井さんはよくその撮影をしています。
「最初は好きなサックス奏者多田葉子さんのライブを見るためにここへ来たんですが、温かい雰囲気が好きで通うようになりました。実は西荻窪に引っ越したのもこの店があったからなんです(笑)。映像を撮るだけではなくて、本格的にアコーディオンを演奏するきっかけにもなった、自分にとっては大切な場所です」
店内には今年カンヌに行った際の和久井さんの写真が! 人との出会いを大切に、多くのことを学ぼうとする和久井さん。お店に集まるみんなから応援されています。

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せっかくなので、アコーディオンの演奏をしていただきました。弾いてくれたのは彼が1番好きなLars Hollmerの『Boeves Psalm』と……『蒲田行進曲』!(笑) 実は和久井さん、ちんどん屋としても活動しているんです。  
 10247369_323113711169473_4363276721525756376_n 「もともとは大学のちんどん研究会の友人を撮影するだけだったんですが、いつのまにか自分も演奏するほうになっていたんです(笑)。早稲田ちんどん研究会(風街宣伝社)は関東唯一の学生ちんどんサークル。実際にいろんな地域の商店街から声がかかって、多い時には1日に2、3件依頼されることもあるんです」
和久井さん、衣装がハマりすぎです。

『将来の夢』 
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「まずはカメラマンとしてお金を稼げるようになって、自分の作品を作っていきたいです。やっぱり、ドキュメンタリー作品を1番撮りたいですね。ライブ映像を一つのドキュメンタリーと考えて、今後も演奏者の動きを収めていきたいです。少しでも早く、僕の師匠のカメラマンに近づきたいです」

出会ったモノや人にとことん向き合う和久井さん。
自身も楽器を演奏する側に立つことが、演奏者の生き生きとした動きを写す秘訣なのかもしれないね。

和久井さんの作品、楽しみにしています!

取材/写真/文 飯野僚子