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第20回 建築専門書店 南洋堂書店 新宮 岳さん・関口奈央子さん

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profile:しんぐう・がく。大学の修士を卒業後、アルバイトから南洋堂へ。後に社員となる。大学での研究内容は「建築メディア研究」。/せきぐち・なおこ。建築の短大在学中、卒業制作で神保町をテーマにしたことがきっかけで南洋堂を知り、アルバイトで入社後、社員に。◯東京都千代田区神田神保町1−21 ☎03-3291-1338 10:00〜19:00 日・祝祭日休 

一日に出る新刊の数は、平均すると200〜300冊にも上ると言われている。今まで出版されたものとあわせたらそれはもう気が遠くなる数。自分が読んだことのある本なんてほんのひと握りで、たくさんあるはずの世の中の面白い本を知らずに過ごしていくのかも。でもそれってもったいなくない? じゃあその道のプロに聞いてみよう。自分でネットで探すより、すぐに面白い本に出会えるかも。いざ、書店へ!
このブログ「Diggin’ Books」は、本が大好きな人たちのお店に行き、本を読むこと、探すこと(=Diggin’ Books)の魅力を教えてもらうブログです。
 
 
言わずと知れた本の街、神保町。駅を出て、書店の建ち並ぶ靖国通りを歩き、駿河台下交差点を皇居の方に折れてすぐの所にあるのが、今回お邪魔した南洋堂書店。珍しい「建築専門」書店で、それに相応しい、スタイリッシュな外観と大きなガラス窓が特徴。 
 
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お店に入ると、スタッフの新宮さんと関口さんが迎えてくれました。新宮さんは大学でこれまた耳に新しい「建築メディア」の研究をしていたそう。

―新宮さんは建築の勉強をされていたそうですが、建築家は志さなかったのですか?

新宮さん(以下、新):「僕の所属していた研究室は、建物のプランを考えて図面を引いてという、いわゆる設計メインの研究室とは違って、日本近代建築史や建築雑誌の研究を対象にしていました。そこで修士課程を終えた後、アルバイトを募集しているここを見つけて、働き始めたんです」

建築雑誌の勉強をした人が、建築専門の書店にいらっしゃるなんて、心強いですね。まさに適材適所です。 
 
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関口さんも、もともと建築に興味をお持ちだったのですか? 

関口さん(以下、関):「はい。でも私の場合はもと建築とは関係ない大学にいました。でもつまらないと思い、思い切って大学をやめて、興味のあった建築の短大に入り直しました。3年の卒業制作で、神保町をテーマにしたんですが、その中で南洋堂の存在を知って、アルバイトから始めました。元々本がすごく好きだったことと、建築専門という面白さに惹かれましたね」 

 
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建築専門というのは珍しいですよね。
—建築の専門書は、どういうところが面白いのですか? 
 
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関:「例えば作品集でいえば、建築写真家がその建物の魅力が一番伝わる角度からかっこよく撮影しているので、芸術、アートとしても楽しめます。専門書といえども、図面ばかりというものが多いわけではないんです。図面に至る前のドローイングというスケッチをまとめたものも、建築家の個性が出ていて面白いし、とてもアーティスティックで素敵なんです」 

そういう観点ならば、専門書も十分楽しめますよね。

関「そうですね。いろんな本を見ておくことで、例えば街に出たときに、あ、これは安藤忠雄っぽいなとか、明治時代に建てられたのかな、いろいろ分かるようになってくるのも楽しいですよ」

確かに、街を見る目もかわってきますね。
—ところで、店内もすごくデザインされていますね。これだけ本がありながら、吹き抜けのおかげで圧迫感がなくて気持ちがいい。 
 
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関:「はい、店内は棚の数を増やすために、建築家の菊地宏さんに頼んで2007年にリニューアルをしています」
創業は1925年と、古くから営まれていますが、当初から建築に特化されていたのでしょうか?

新:「いえ、創業当初はいわゆる普通の古本屋だったようです。建築専門になったのは、1950〜60年代のことです。街がら、大学が多いこともあり、学生さんや先生からの要望が多かったので、だんだんと建築の本を扱うようになっていきました。今は新品も古書も両方を扱っています」 
 
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街の需要が建築専門書店を生み出したんですね。とはいえ、インテリアの本や、建築をベースにしたエッセイなど、知識がない人でも楽しめる本もあるのが面白いですね。

新:「そこはすごく意識をしていて、建築の知識はないのだけど興味はある、そんな人に手に取っていただけるものがまず目に入るように、入ってすぐの棚に置いています。すぐに難しい専門書があったら、入りづらい空気になってしまいがちですからね(笑)2階には建築雑誌のバックナンバーのストックもあります」 

確かに専門書店でありながら、なんだか面白い本が眠っていそうな空気が漂っているのは、建築初心者への気遣いの表れなんですね。
それでは今月も張り切ってLET’S DIG! 
 
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1st DIG『建築デザインの解剖図鑑/スタジオワーク』
新:「建築の知識はないけど、興味がある人に勧めたい一冊です。建築の何を見て、どこをおもしろがったら良いのか? ということがわかってくる本で、建物のことがわかると街歩きが楽しくなりますよ。この本以外にも出ている解剖図鑑シリーズはどれもおすすめです」
建物のことがわかると街のこともわかってくる、という新宮さんの言葉が印象的。街歩きがもっと楽しくなる、シティボーイにとっては必読書かも。 
 
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2rd DIG『旅はゲストルーム/浦 一也』
新:「著者が泊まったホテルの間取りとディテールを、部屋の備え付けのメモ用紙にスケッチしたものがまとめられている本です。写真では精巧に写って情報量が多すぎる場合でも、自分の目を通して、必要な情報だけを線で残すことはとても意味があることだと思います。簡単で良いのでやってみると楽しいですよ」
ケータイのカメラが当たり前となった今だからこそ、スケッチってすごく斬新。
 
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3rd DIG 『Window Scape 窓のふるまい学/東京工業大学 塚本由晴研究室編』
関:「東京工業大学の塚本さんの研究室でフィールドワークをし、世界中の窓辺の写真とそのスケッチを集めた本です。建築のことがわからなくても、見ているだけで単純に気持ちがいい一冊です」 
ぱらぱらとめくるだけで旅行気分に浸れます。専門書だけでなく、誰でも楽しめる建築の本を置いているのが南洋堂書店のセレクトの面白いところ。 
 
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ちなみに、仕入れと古書の管理をしているのが新宮さん、お店のブランディングと本の見せ方を考えるのが関口さんという風に役を分けているそう。
関:「新宮が漁師で、私が料理人。そんな関係ですごくバランスよくやっています。自分が楽しいと思ったことをお店で表現しているので、いろんな人にそれが伝わったら嬉しいです」
この絶妙な分業が幅広い人が楽しめる本屋さんを作っているんだね。 
 
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自分が知識を持っていないことでも、面白そうと思ったらまずアクションを起こしてみるのはシティボーイの条件。それがもし建築の分野のことだったら、南洋堂をのぞいてみれば、きっと入り口になる一冊が見つかるはず!

HPでは在庫検索もできる。
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取材・文・写真/岩渕大介 写真/飯野僚子