マガジンワールド

第42回 福井和来(21)大学生

夢中なことがあったり、叶えたい目標があったり、誰にも真似できない自分だけの“何か”を持ってる人ってかっこいい。
シティボーイってどんな人のことを言うの!? という問いの正解は決して一つではないけれど、彼らが共通して持っているのは、そういう自分の興味に対する強い想いなのではないでしょうか。  
このブログでは、毎回1人のシティボーイに密着取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイの実態を調査していきます。

今月のシティボーイはポパイ編集部でアルバイトをしている大学生の福井和来くん。先日、「今日で当分バイトをお休みしてNYに行くんです……」なんて突然言うものだからなんだと思ったら、ネオンサイン作りを勉強しに行くのだという。「週末に朝から作業をしているのでぜひ来てください!」と福井くん。というわけでやってきたのは大田区、京急空港線の大鳥居駅。今回はネオンサインを製造する「シマダネオン」へお邪魔しました。

シマダネオンは1972年創業のネオンサイン製造会社。昨年開催のAmazon Fashion Weekの会場や<BEAMS>の店舗内に置かれているサインなどを手がける、その世界では有名な会社。中に入ると作業中の福井くんを発見! 

 
 
「今日は8時から作業をしています。江戸川区に住んでいるので通うのに1時間半くらいかかりますが、ここに来るのは週に一度なので、がんばって早起きをしています。今は2月下旬に開催されるjukeというパーティで飾るネオン作り。ガラス管を曲げ終わって、光らせたくない部分を塗りつぶす工程まで来ました。テストで光らせて、また塗って、を繰り返して仕上げます!」
福井くんがシマダネオンの門を叩いたのは昨年の4月。普段は青山学院大学に通っていて、特にアート作品を作ったことはなかったそう。なんでネオンサイン作りをはじめたの?

「僕は音楽が好きなのですが、『ソウルトレイン』というアメリカのダンス音楽番組などの装飾でネオンサインがよく使われていて。かっこいいなってずっと思っていました。19歳のときに実家を建て替えることがあり、せっかくなら新しい自分の部屋に手作りのネオンサインを置いてみようと思ったのがきっかけです。ただ、作り方を調べると特別な道具も必要だし、なかなか一人でやるには大変そうで……ひとまず手軽に加工できるLEDの照明を買って飾ってみたんです。でも、やっぱりイメージしていたガラス管の光とは違いました。以来、ネオンサイン作りを勉強できる場所を探していて、やっと見つけたのがこの会社。教室みたいなものは特別開いてはいないのですが、社長にお願いをして週に一度通わせていただくことになりました」

これまで福井くんが作った作品は制作中のものも含めて3つ。最初の作品は念願の自分の部屋の照明かと思いきや、洋服ブランドの展示会に飾るサインだった。
 
「さっそく作品作り! とはいかず、当初はネオン管を熱して曲げる練習の繰り返し。そんな中昨年の夏に知り合いの<GLAMHATE>というブランドの方に誘われて、展示会の会場に置くネオンサインを作らせていただいたんです。『まだ初心者なのに大丈夫ですか?』とお伝えしたんですが、任せてくださって……いろんな方に見ていただけて本当にうれしかったです」

はじめてとは思えないほど、いい感じ! でも、まだまだ修行は始まったばかり。次にネオンサイン作りの工程を見せてもらいながら、今の課題について聞きました。

 
「ネオンサインは、作りたい形の下書きを作って、それに沿ってネオン管をバーナーで熱して曲げるのが基本の作り方です。元からある型を使って練習をしたいと思います!」
作るのは“E”。

「曲げたい部分に目印を入れます」

「次にバーナーでネオン管を炙って柔らかくします。今回は“E”の直角を作るためにピンポイントに火を当てます。ネオン管の先端に蓋をして、空気を吹き入れながら炙るのがポイントです」

「ネオン管が柔かくなったら成型の作業。下書きの紙の上に雲母という、熱に強い石のシートを敷き、それに沿って曲げていきます。このときも太さを変えないように空気を入れ続けます。この作業が一番難しい。これはまだ上手にできたほうなのですが、社長から見ると全然まだまだだそうです……」

写真上、右側のネオン管は失敗作。左と比べるとたしかにネオン管がゆがんでいて不恰好。ちょっと油断しただけですぐにこうなってしまうとか。失敗したら処分、やり直しはなしの厳しい世界です。
とはいえ、初心者なのを逆手にとって作った作品もあるそうで。

「これは無造作にネオン管を曲げて作った花がイメージの作品です。花瓶に入れて部屋に飾るために作りました。プロは絶対にこんな下手な曲げ方ができないので、初心者で技術がないからこそ作れる作品です(笑)」
たしかに、ありそうでなかった作品!

最後にこれからのことについて聞きました。

写真上は「Flektro」、下は「The tiny spoon」。いずれもLAにて。
「昨年の9月にLAに行ってきたんです。そのときに、いろんなネオンサインのアトリエに行ってきました。やはり街にあるネオンサインの数も日本とは比べものにならないし、デザインも見たことのない自由なものばかり。すごく刺激的でした。これから行くNYにも、ネオンサインの教室がたくさんあって、今まで以上に制作に集中できそうです。マンハッタンにある『LET THERE BE NEON!』というアトリエに行ってみたいと思っています!」

趣味で始めて、NYへの留学を決意する行動力はすごい。
帰国したらPOPEYEサイン作ってね!