マガジンワールド

第43回 吉田健太郎(25)・吉田康太郎(23)

夢中なことがあったり、叶えたい目標があったり、誰にも真似できない自分だけの“何か”を持ってる人ってかっこいい。
シティボーイってどんな人のことを言うの!? という問いの正解は決して一つではないけれど、彼らが共通して持っているのは、そういう自分の興味に対する強い想いなのではないでしょうか。  
このブログでは、毎回1人のシティボーイに密着取材。彼らのホームタウンを巡りながら、シティボーイの実態を調査していきます。

今月のシティボーイズは吉田健太郎さん(写真右)、康太郎さん(写真左)兄弟。巷で“健康ブラザーズ”と呼ばれる2人は今年2月、新丸子駅の近くにアイスクリームショップ「BIG BABY ICE CREAM」をオープンさせたばかり。兄健太郎さんが内装などのクリエイティブを担当し、康太郎さんは店全体をディレクションするオーナー。二人三脚で店を作った2人に会いに行ってきました。

店があるのは、東急東横線新丸子駅の東口、商店街を歩いて3分くらいの場所。
 
白をベースにした店内は、大きな窓が気持ち良い。
健太郎さん「子ども連れも座りやすいベンチ席、お酒も飲めるようなカウンター席、そしてカップルが気軽に使えるスタンド席の3種類があって、どんな年齢の人も一年中店内でゆっくりアイスが食べられるように設計しました」

 
目当てのアイスクリームは50種類のレシピの中から日替わりで10種類ほどが並ぶ。さらにはアルコールのドリンクメニューもあって、ちょっとダイナーのような感じ。調理はスタッフの安徳穣さんが担当。

中でも健康ブラザーズがおすすめするのがドーナツアイス(¥600)。
トーストした固めのドーナツにミルクアイスをのせて、仕上げにお好みでメープルシロップを。背徳感たっぷりの1品で、これを嫌いな人はいないはずっていうくらいに至福の味。味はもちろんなのだけど、彼らがこのメニューを提供しているのにはもう一つ特別な想いがあるから。
康太郎さん「もともと僕は自由が丘にあった『バターフィールド』という老舗のダイナーで働いていて、そこの名物だったんです。残念ながらその店は昨年閉店してしまい、その際にオーナーから直々にレシピを受け継ぎました。アイスクリームは僕らの店のもので、それ以外はすべて当時のままです。ドーナツは『バターフィールド』時代から変わらず、『ビッグバン』というパン屋さんが特注で作ってくれたもの。偶然にもここから目と鼻の先に店があるんです(笑)。さらには食器も『バターフィールド』のオーナーから受け継いだもので、他のカトラリーもいただきました。お店のオープンのときにも応援に来てくださって、今でもよくお世話になっています」

康太郎さんが『バターフィールド』でアルバイトを始めたのは、そのときすでにいつか自分の店を持ちたいと思っていたから。そもそも彼らはなんでアイスクリーム屋さんを開こうと思ったんだろう。

康太郎さん「僕たちは小さい頃にボストンやフロリダで生活をしていたことがあって、よくダイナーに食事をしに行ってたんです。そこは食べ物もアイスクリームもお酒もなんでもあって、お客さんがそのときに食べたいものを自由に決めるスタイル。それがずっと印象に残っていました。さらには曾祖父が横浜でコンニャクの製造会社をしていて、繁忙期を過ぎた夏にはアイスクリームを売る商売をしていたんです。そういう自分のオリジンもあって、小さい頃から“街の気取らないアイスクリーム屋さん”を作りたいと思っていました」

夢を持ってからというもの、2人は北京やベルリン、シカゴ、ポートランド、ニューヨーク、ロンドンと色んな都市を一緒に旅行したそう。
康太郎さん「小さい頃の経験を兄と共有していたので、彼と一緒に店を作れたらいいなとずっと思っていたんです。兄とは本当に友達のような関係で、ポートランドで一日に何軒もカフェを回ってコーヒーを飲み続けてお腹を壊したこともありました(笑)。旅先では将来作る店のイメージ作りをしていたんですが、特にNYのグリーンポイントにある『ピーターパンドーナツ』が心に残っていて。1ドルコーヒーとドーナツの店なのですが、かっこつけてなくて、みんなの生活の中にある空間。こんな店にしようと決めました」

そして大学を卒業後、2人はそれぞれ留学。健太郎さんはNY、康太郎さんはロンドンへ。
 
健太郎さん「僕は美大でインテリアを専攻し、卒業後はNYの設計事務所でバイトをしながら、アメリカ人のルームメイトと一緒にカフェやバーを巡っていましたね。その頃の縁があって、ルームメイトの妹さんが店のトレードマークであるイラストを描いてくれました。ウディ・アレンがモチーフなんです」

次に見せてくれたのが、もう一つインスピレーション源になったという写真集「DINERS –PEOPLE AND PLACES」。
 
康太郎さん「この写真のように、色んな年齢・職業の人がおのおの好きなものを食べて、好きなことをしている。僕たちもせっかく店を開くなら、仲間だけで完結するような場所にしたくないと思いました。その点ではこの新丸子という場所を選んでよかったなと思います。このまわりには個人商店がたくさんあり、商店街は歩行者天国になって色んな世代の人たちが毎日行き来する。この街にあるものはそれぞれ個性が強いんだけど、即興のジャズみたいに一つにまとまってもいるんです。実際、店をオープンしてみると本当に色んな年齢の方が来てくれます。高齢の方が、BGMで時々流す“ヤマタツ”や杏里の曲に『いいね〜』なんていいながら入ってきてくれて可愛らしいチョコアイスを食べていたり、反対に5歳の男の子が来店して『今日から俺ら友達ね』っていいながら大人っぽい抹茶味を食べていたりするんです(笑)」

アイスを前にすると、大人はこどもでこどもは大人。年齢なんて関係なくなっちゃうのかもしれない。彼らがつけた店名「BIG BABY ICE CREAM」はまさに言い得て妙だ。

最後にこれからの目標について聞きました。
「先輩の『バターフィールド』のように、3世代の方々が楽しめる僕達の時代の新しい老舗をつくっていきたい」

もうすでに街のコミュニティーの中心になりつつある彼らの店。夏にはもっと色んなお客さんで賑わうんだろうな。