マガジンワールド

第45回 『ROUTE BOOKS』丸野信次郎さん

 
まるの・しんじろう|『ゆくい堂』代表取締役。本業である工務店の「YUKUIDO」を上野へと移転した際、向かいの建物も何かに使えないかと「ROUTE BOOKS」を2015年にオープン。○東京都台東区東上野4-14-3 ☎03-5830-2666 12:00〜21:00 無休 
 
いろんな本をネットで買える時代にはなったけれど、読みたい本を見つける技術はそう上手く身につかないのが歯がゆいところ。ならばまずは外へ出て、本探しのヒントから見つけていこう!
このブログ、「Diggin’ Books」では街の本屋さんへと赴き、プロフェッショナルの方々から本の読み方、選び方を教えてもらいます。

ワザ、というものはそもそも頭で考えるのではなく、肌で感じることで身につくものなんじゃないかと思う。これはブルース・リーもヨーダも言っていたのだから間違いない。
もしかしたら読書にだって同じことが言えるかも!?
そんな予感とともに今回やってきたのは、上野駅から徒歩数分のところにある書店「ROUTE BOOKS」。店主の丸野信次郎さんにお話を伺いました。
 
 
 
上野といえば駅から見て西側にある動物園や公園、博物館などが馴染み深いが、そちらに慣れている人は、東側の閑静な空気に少々驚くのではなかろうか。

『ROUTE BOOKS』はそんな東上野の落ち着いた住宅街に位置する本屋さんで、平日・休日を問わずあたりにはスローな空気が流れている。

店は高い天井と広い奥行きのある空間で、本と植物、そしてカフェスペースが設けられている。ブックカフェと聞いても今では珍しくないけれど、これだけ店頭に植物が溢れかえる書店はあんまりない。僕の自宅の植物といえばせいぜい植えてもいないポピーの種ぐらいのものだから、なかなか刺激的な光景。
 
 
 
上野といえば駅から見て西側にある動物園や公園、博物館などが馴染み深いが、そちらに慣れている人は、東側の閑静な空気に少々驚くのではなかろうか。

『ROUTE BOOKS』はそんな東上野の落ち着いた住宅街に位置する本屋さんで、平日・休日を問わずあたりにはスローな空気が流れている。

広いスペースに対して、店頭に並んでいる本の数は決して多くはない。書籍スペースは店舗の端の方に設置されて、なんなら植物やカフェに設けられているスペースの方が大きいくらい。それでも並べられている本をよく見ると、決して本をないがしろにしているわけではないどころか、丁寧に選んだものだけを扱っていることがわかる。 
 
 
 
「直接的に暮らしを豊かにするような音楽やファッションをテーマにしたジャンルをメインに小説なども扱っています。政治だとか自己啓発に関するものや、大型書店で平積みにされているような本は置かないように。広くて膨大なラインナップだと、3日かけて見て回らないと欲しいものが読みたいものが見つからない、なんていう勿体ないことにもなりますから、この店らしくライフスタイルを作る本を選んでいます」

他にも店を見て回ると、植物だけでなく野菜や器まで。なんでまた本屋と言いつつ本を全面的に押し出さないお店にしたんだろうか。
 
 
 
「僕自身、工務店が本業で、本が大好き! という人ではないんです。でも、本や書店って本好きな人だけのためのものじゃない。誰の家にも1冊は本があると思うけど、植物もあるし、本を置いた近くでカレーだって作られることもあるでしょう? よく、本屋に行くとその独特な香りと空気感でトイレに行きたくなるという話がありますが、それをあえて感じないようなリビング空間のようなものを作りたかったんです。店を始めた当初は『植物の真横に本をおくなんて、本が濡れたらどうするんだ』なんていう声がありましたが、もっと気軽に本を楽しめればいいのにという思いがこの店には詰まっています」

確かに、店に入った瞬間を思い出すとコーヒーや植物の香りが漂っていて、いい意味で本屋さんらしくないなと思った。本がある生活っていうのを広く捉えて、それをお店の中で表現するのは工務店を営む丸野さんにしかできないことかも。

本はあまり読まないという丸野さんだけど、本を嫌いなわけではもちろんない。 
 
「普段から読書をする人ではないので、選ぶのは写真や絵が多い本。そこに添えられた文章はその画の説明だったりするので、本気で写真を見れば言いたいことがわかったりするんです(笑)。あと、僕が本を手に取るのは小さなことでも大きなことでも、何かに迷ったりした時でしょうか。本にはネットで検索してもヒットしないような答えがあることが多いと思うんです。僕の場合、何か知りたいときに10冊まとめて購入して、ピンポイントで読みたい部分だけを読むような、あまり褒められた読み方ではないですが……それでも本をきっかけに行動を起こしてきました。今、本業でやっているリノベーションだってそう。20年近く前のまだリノベーションという言葉がない時代に、ある日本の同業者の方の本を読んで感銘を受けたんです。思わず巻末にある連絡先にメールをして、その著者の方とは今でもお付き合いがあります」

本を入り口に何か行動を起こして生活を豊かにする。それってやり始めるのにちょっと手間がかかったりするものだけど、『ROUTE BOOKS』はその手伝いまでしてくれるからご安心を。店舗の二階にはワークショップスペースが設けられており、英会話教室やろくろ教室、ライブ演奏も定期的に行われている。
 
 
「英会話教室は毎日開催しています。ワークショップが複数重なることも珍しくなくて、英語を勉強しにきたはずが気づけばろくろを回していたお客さんもいますよ(笑)」

 
 
「学生時代の友達に本屋をやっているなんて言えば、笑われちゃうよ(笑)」という丸野さん。実は選書は石川さんと言う専門のスタッフの方が担当されている。ROUTE BOOKSの雰囲気に合う本をいつも見つけてきては、「この本はどこに置いてあるのがいいか、何の本の隣が良いか」と、配置にもこだわる職人ぶりを発揮されている。

 
 
と言うわけで選書のプロ、石川さんにオススメの本を伺っていきましょう!

1st DIG 『イマジン。』 川端寛之
 
 
こちらは石川さんだけでなく、丸野さんも「面白いよ」とオススメしてくれた一冊。
京都のとある不動産屋が物件の紹介を、ありがちで淡白な文言ではなく、ポエムでやってのけてしまっていたものを書籍化したと言う代物だ。
 
住まいのことなんだからちゃんと紹介してよと突っ込みたくなるが、不動産屋さんが思わず詠んでしまう物件ということなら・・・と、ある意味宣伝としては間違っていなさそう。 
 
2nd DIG 『spectator vol.36 コペ転』 エディトリアル・デパートメント 
 
年に3回刊行しているという雑誌、『spectator』のコペ転特集。コペ転とは従来の考え方が180度変わる様を表すコペルニクス的転回の略語ということで、これにまつわるインタビューのみをひたすら集めたのがこの特集だ。
中身はひたすら文章という骨太な特集だが、人生が180度変わってしまった人の話の数々は、将来に頭を悩ませるシティボーイ必読の書である。

3rd DIG『V.ロッシのコーナリング』エイムック
 
唐突なバイク本の登場に驚いてしまったのだが、これはバイクを走らせるのも見るのも好きという石川さんの趣味が如実に表れている一冊。
実際、バイク好きが勧めるバイク本ほど信頼できる趣味の本もないんじゃないか?

ここで紹介しているもの以外にも、店の中央には丸野さんが直接知り合った人たちの書籍やZINEが並べられているブースも用意されている。入れ替わりの頻度も高いようで、足繁く通ってはチェックしておきたいブースの一つだ。

 
無類の本好きの中には「本をインテリアのように扱うなんてけしからん!」と憤る人もいるかもしれないが、『ROUTE BOOKS』くらいミニマルに本を集めて、適度に紹介してもらった方がネットサーファーには足の運びがいがあるというもの。だって、ヴァレンティーノ・ロッシのコーナリングを特集した本があるなんて、『ROUTE BOOKS』に来なければ知ることもなかっただろうから。それに、本を目当てに来た人が植物に目覚める予想外のことだってここならあるかもしれないしね。