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第46回 松本光貴(21)・山中真太朗(22) 大学生・フードトラック『Fresh Sound Store』店主

「好き」に対して夢中になり、日々走り続けている人って、それだけでもう魅力的だ。「シティボーイってどんな人?」っていう問いに対する答えは人それぞれだろうけど、共通しているのは「自分のスタイルを持った人」ってことではないでしょうか。
このブログでは、今気になるシティボーイをピックアップ。彼らの「好き」を追っていきます!

ここ数年、都内で見かけることが増えたフードトラック。青山の国連大学広場で毎週末開催される「ファーマーズマーケット」を始め、今では多くの場所で色んなジャンルの食べ物のトラックが出店されているし、最近は『TLUNCH』なんていうフードトラックの情報アプリまであったりする。間違いなくカルチャーとして根付きつつあるその世界に飛び込もうとしているのが、松本光貴さん(写真左下)と山中真太朗さん(写真右上)。
現在都内の大学に通う彼らは、昨年留学先のカリフォルニアで得た経験をもとにフードトラック『Fresh Sound Store』を今秋オープン予定! 学業の傍ら店を開くなんて、行動力がすごい。というわけで今回は開店準備に忙しい2人に会いに行ってきました。
 
 
 
9月某日、渋谷駅南口にある複合施設『渋谷ストリーム』の開業記念として開催されたイベント「Shibuya River Fes」。神輿で盛り上がる通り沿いには、クラフトビールやコオロギラーメンなるものが売られていて、その中にマスタードカラーが一際目を引く車を発見! それが彼らの店『Fresh Sound Store』。この日はプレオープンとして出店していました。

残暑の中、彼らが作ったコールドブリューを片手に涼んでいるお客さんがちらほら。 

希望すればトラックの屋根にも上がらせてくれる。芝生がひかれているから快適で、眺めも抜群な特等席。
 
主役のフードメニューは、レモンとオリーブが効いたシュリンプや、ミニトマトと意外に好相性なテリヤキチキンのタコス。それに朝からでもばくばくいける、優しい味わいのサバのホットサンドなど。留学でカリフォルニアフードを巡り歩いてきた経験を活かし、どれも自分たちで考えたオリジナルレシピなんだとか。ちなみに、スムージーも本オープン時にメニューに追加されるというから楽しみ。
 

プレオープンながらも多くのお客さんで盛り上がっていた2人の店。じっくりと話を聞くべく、日を改め吉祥寺にある光貴さんの家を訪問。ここは彼らの作戦会議の場所。 

中に入ると、手作りの店のロゴやチラシが部屋の壁に。チラシのデザインがなんかシュールで可愛い。
 
 
現在大学3年生の2人は同じ山口県の出身で、中学から大学まで偶然同じ学校。一卵性双生児ですらこんな境遇はなかなかないのでは!? 
 (左が光貴さん、以下K。右が真太朗さん、以下S)
S「初めて会ったのは中学のとき。中一の夏過ぎぐらいから徐々に遊ぶようになりました」
K「いや、めちゃめちゃ遊んでたよ(笑)。楽器を一緒に演奏したり、週末には山口から広島まで出かけたりしていました」
S「当時、同年代の定番の遊び場は地元のイオンモールだったけれど、俺らはがんばって片道2時間かけて広島まで遠征していました。知らない広島県民に話しかけて、その人を一笑いさせようとしたり、山口では出回ってないウィリーウォンカのチョコを買って帰ったりして、『俺らイケてんな』なんて言ってました(笑)」
K「高校時代は同じサッカー部で練習づけの毎日。その後受験勉強は別々にしていたけれど、偶然都内の同じ大学に通うことになりました」
S「買い物や食事などに一緒に行くことは減ったけれど、バックパック旅行だとか、フードトラックの出店だとか、何か大きなことをするときにはやっぱりお互いを誘います。もう、腐れ縁なんです」

そもそも彼らがフードトラックに興味を持ったきっかけはなんだろう。
 
K「『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』という映画を観て、一気にフードトラックというものに魅了されてしまったんです。その後、下北沢に出店している『good hood food』という店を知って、実際に店の人に会いに行きました。『CHAOS FISHING CLUB(釣りやスケートをするクルー)』ともつながりのある店主さんはカルチャーにも詳しく、いい意味で気が抜けている方。キャンピングカーを改造したトラックに乗せてもらいながら話を聞いて、そのライフスタイルを目にしたら、『あー、これは自分たちもするしかないな』って思ったんです」
S「音楽やファッションももちろん好きだけれど、学生のうちにDJをしたり、ファッションに関する活動をする人はたくさんいる。その中で『フード』を選んで、食を中心に色んなカルチャーを発信することが僕たちらしさかなと思っています」

フードトラックに興味を持った2人はそれぞれカリフォルニアに留学。思考回路が似ているのか、これまた場所や時期が偶然重なった。
 
K「アメリカでもお互い50km圏内の場所に住むことになって『またお前かよ』って思いました(笑)。と言いながらも、店を開くための会議をしつつ、2人で朝市やファーマーズマーケットに通って食文化を研究しました。中でも、『Guerrilla Tacos』というタコスを売るフードトラックと、『ROW DTLA』っていうマーケットにはかなり衝撃を食らいました」
S「留学中には畑を借りて自分たちで野菜の栽培もしていました。僕たちは調理学校に通っているわけではないし、技術的な部分で優れているわけではないので、素材にこだわりたいと思ったんです。そうやってまずは食材と向き合いながら話し合いを進めて、店で出すメニューはスムージーとホットサンド、コーヒーの3つをメインにすることに。帰国してからも、試験的に販売をしながら全国の農家を訪ね、食材を使わせてもらうよう直接交渉しています」

りんごを求めて長野県を訪れたり、コーヒーには彼らの地元山口県出身の方がブラジルで栽培した豆を使用したり。日本全国から選び抜いた食材を乗せて走るトラックって、なんか小さい車なのに大きく感じる。

西海岸の空気を目いっぱい吸って帰国した後に取り掛かったのはトラック作り。
フードトラックって言われると、おそらく業者が作ったであろう車体をイメージしがち。だからこそ、自分たちの手で作ったということが存分に見て取れるトラックから彼らの人柄がにじみ出ている。
S「地元の山口で制作しました。全国から友達が手伝いに駆けつけてくれて、この夏についに完成しました!」
K「人とのつながりがあるからこそ今があります。帰国してからはジャンルを問わず店の運営に役立つような講演会に行ったり、会いたい人にアポを直に取ってみたり。この数ヶ月でFacebookの友達が一気に200人以上増えたぐらい。その中でも、東急がスポンサーの若手によるプロジェクトを支援する『100BANCH(ヒャクバンチ)』という企画に加入できたことが大きな転機となりました。僕らがしてきたこと、しようとしていることは社会的にも間違っていなかったんだと思えて、大きな自信になりました」

次にやってきたのは、『100BANCH』。ここは渋谷駅南口の開発が進むエリアにあって、渋谷ストリームやGoogleオフィスのお隣。

施設内に入ると、他のプロジェクト会議に白熱するヒャクバンチズが。挨拶がてら始まった何気ない会話から、共同活動を行うことが即決したりするらしい。10月31日にはハロウィーン企画が施設前で開催予定だとか。
 
『100BANCH』が支援するプロジェクトは、医療やIoTなどジャンルレス。彼らのフードトラックにはどのような野望があるんだろう。
K「『刹那的なコミュニティ形成を目指すトラック』がテーマです。全く知らない人同士が、僕たちのトラックを中心にしてつながって盛り上がっていってほしくて。そういう空間を『4th place』って独自に定義したんです」
S「目指すはラーメン屋のおっちゃん的存在。締めのラーメンをすすりに来る人と話す感覚かもしれないです。そのために、コーヒーはマグカップや瓶で提供したり、テイクアウトはなるべく行わないシステムを考えています」
 
フードだけでなくコミュニティを提供するトラックって、素敵すぎないか。人懐っこい2人の人間性がまさに注ぎ込まれているアイデア。事実かどうかは別にして、冷たいと言われる東京の人の輪が広がればいいな。
S「将来的にはもっと大きな規模でのコミュニティ作りをしたいです。例えばゲストハウスとか、町全体を巻き込む事業も。かっこいいおっちゃんになりたいです」

ほぼ毎日会っているらしいけど、取材の合間も話が尽きることのなかった2人。ぶっちゃけると、お互いのどういうとこが好きなんだろう。 
K「それはもう腐るほどあります(笑)。あまりにもあり過ぎて言葉にしたこともないし、むしろわからないです」  
 
間もなく走り出すこの一台のトラックが、各地にどのようなコミュニティを生み出していくのだろう。街で見かけた時には立ち寄って、彼らのホットサンドを片手に隣のお客さんへ話しかけてみよう!

Instagram : @fresh_sound_store

写真・文 岡本悠太郎  編集 飯野僚子