マガジンワールド

第49回 松川 恵(22)学生

「好き」に対して夢中になり、日々走り続けている人って、それだけでもう魅力的だ。
「シティガールってどんな人?」っていう問いに対する答えは人それぞれだろうけれど、共通しているのは「自分のスタイルを持った人」ってことではないでしょうか。

このブログでは、今気になるシティガールをピックアップ。彼女たちの「好き」を追っていきます!

すでにお気づきかと思いますが、今回取材したのはシティボーイではなく“ガール”。
そのきっかけは昨年発売の本誌1月号「シティガールたちよ!」で女の子の頭の中を覗いたこと。彼女たちの力強さや天真爛漫さには僕たちも学ぶところがあるし、もっと色んなシティガールに会ってみたいと思ったのです。

今回取材したのは、早稲田大学に通う松川 恵さん。同窓生の僕は、かねてから「メグミントンっていう破天荒な奴がいる」という噂をキャンパスのあちらこちらで耳にして気になっていた。聞けば、メグミントンこと松川さんは、シンガー、ダンサー、ポエマーなど、様々な表現活動をしていて、最近は特にペインターとしての活動に力を入れているとか。確かになんだか激しそう。というわけで多彩なスタイルを持ち合わせる松川さんの、好奇心の一部を覗いてきました!

まず最初に松川さんの馴染みの場所として教えてもらったのが、練馬春日町にある公園。ここではよく絵を描いたり、ダンスの練習をしているのだとか。地元のおじいちゃんやおばあちゃん達にも負けないヘビーユーザーで、彼女はここをスポットと呼んでいる。

まずはご挨拶に今までに描いてきた絵を拝見。 
 

これはショッキングな出来事があって気分が落ち込んでいた時の絵。大学生活の中で一番ブルーな気分になってしまって、3ヶ月間憂欝だったそう。毎日雨で気分が上がらない町にいたカートコバーンもそうだけど、憂欝な気分ってクリエイティブな感性が刺激されるのかも。

お次の一枚には、「世に生きる人々の思想や個性をカラフルな四角で表し、それらを見定める眼を磨こう」っていうメッセージが込められているんだとか。ギョロっとした目力に吸い込まれそう。

これは、Tシャツにプリントするために描いたという壁画のような絵。古代エジプトを連想させるけど、たばこの紫煙をくゆらせているところがシュール。テーマを決める時って、いったいどうしているんだろう。

「それが全然決めずに書き始めてしまうんです。最終的には普段から疑問に思ったり、頭の中で考えたりしていることが絵に落とし込まれていますが、描き始めると自然に筆が走るので最後にテーマが決まるという感じでしょうか。父型が絵の上手な家系で、その血が騒いでいるのかもしれません(笑)。もともと絵を描き始めたきっかけも父の影響で、幼い頃に絵画教室へ通っていたんです。当時はクレヨンや色鉛筆、版画など様々な手法を習っていたんですが、今は水彩画が好き。自分で新しい色を創り出せるところがもう最高なんです」
 
そう言っておもむろに鮮やかな紫色のリュックを開け始めた松川さん。中にはスケッチブックが何冊も詰まっていた。クジラのポーチは友人からのプレゼントで、絵の具入れにしているんだって。

「おばあちゃんに言われて気付いたんですが、どうやら私は細かいところから書き始めるタイプみたい。私は女性をモデルにすることが多くて、その顔を書くときも目や鼻、口からスタートします。女性ってすごく神秘的だし、落ち込んでいるときって何よりも落ち着く存在だから描きたくなりますね。みんなお母さんから生まれるからなんでしょうか」
 
左ページの絵は、これでもかと細かく描かれていて、なんなんだこれは状態。でもよく見ると、女性の顔のパーツが散りばめられていて、彼女の言葉の通り神秘的。

「絵に本格的に取り組み始めたのはここ1~2年のこと。それまでの大学生活では、ソウルやファンクといったブラックミュージックを演奏するバンドのヴォーカルをしていて、Alicia KeysやDonna Summer、Chaka Khanなどを歌っていました。その次には、いわゆるポエムを書いていました。悲しいときに書くことが多いんですけど、それには理由があって……落ち込んでいるときって、きっとモノゴトに対する見方や人との付き合い方がガラッと一変する時でもある。それは私の人生にとっては必要な出来事だから、しっかり言葉に落とし込んで忘れないようにしておきたいと思ったんです」
落ち込んでいるときって他のことを考えられなくなりがち。だけど松川さんはそんなときこそ冷静になって、しっかり自分に向き合っている。
 

「好きなことって、好きだけどある程度の期間ごとで一呼吸置くときがきませんか? 私はその繰り返しで次から次へと好きなことができるんです。これは大好きな横尾忠則さんが唯一モットーにされている『アホになれ』という一言に影響されたのかも。すごくシンプルな言葉ですけど、これに尽きるなぁと感動して。何事にも熱中しろってことだと私は思っています」
 
横尾さんとの出会いは、神保町の古書店。表紙の横尾さんの絵に惹かれて文庫本を買ってみたら、あまりにもおもしろく衝撃を受けたんだとか。彼の著書は何冊も持っていて、お気に入りは『芸術は恋愛だ』。この日もリュックにはその愛読書のうちの1つが。付箋が何枚も貼られていて、参考書みたい!

さまざまな分野に独学で挑戦し続けている松川さん。今は絵にアホになっているけど、これからはどう活動していくのだろう。
「『伝えない絵本』っていうテーマで絵本を作りたいです。絵本って、物語を通して学ぶ、誰もがまずはじめに触れる教材。実際に本屋さんに並んでいるのも、啓蒙的なテイストのものが多いと感じています。でも、そこに少し疑問を抱いているんです。もっと読み手自身にもイメージを膨らまさせて、読みながら物語を一緒に完成させていくことがあってもいいのかなと。例えば、4ページ構成の絵本があったとします。3ページ目だけを白紙にして、前後の流れから読み手が空白の3ページ目を生み出す、みたいなつくりはどうかなと思っています。今は個性尊重を謳う時代ですが、それはなんでもありってわけではない。きちんと周囲とのバランスを保ちながらいかにオリジナリティを生み出せるか、ということを絵本で表現したいですね」

最後に、絵を描いているところを見せてもらった。普段テーマは描きながら決めると言っていたけど、半ば強引に今回は提案。有無を言わせなかったので、少し悩ませてしまいました。ごめんなさい。

いったん手が動き始めると、そこからはもうササっと描き上げてしまった。その流れる様な一連のフローをどうぞ!
 
 
完成した絵がこちら。テーマはずばり、POPEYE!! ところどころに名前が散りばめられているから探してみよう。身体の左半分は眼で視える世界、右半分は心の目でみる本当の世界。これもやっぱり描きながら思いついたそう。無茶振りしてしまったけど、アイデアの詰まった一枚をありがとう。 

大学卒業後はエジプト留学を計画中だそう。エキゾチックな文化やアラブ美人、古代の壁画からインスピレーションを得たいんだって。これからもジャンルレスに様々なことへアホになって打ち込むこと間違いなしの松川さん。「伝えない絵本」を読める日を楽しみにしています!!

文・写真 岡本悠太郎